圧巻というか圧倒されるというか、こんな度肝を抜く映画があったことにも驚かされます。物凄い一本でした。監督はアレクサンドル・ソクーロフ
19世紀の衣装を身にまとった人たちが車から降りてきてとある建物へ入っていく。カメラの一人称により彼らを追いかけ語りかけると共に、一人の黒服の男性がリードするようにカメラを導いていく流れとなる。
建物はエルミタージュ美術館、というか、宮殿である。部屋から部屋へ導かれるままにカメラが入っていくと、壮麗そのものの調度品、美術品、さらにはエカテリーナ大帝も登場し、時代は現代から帝政ロシア時代へと遡っていく。時に現代が一瞬映されるが、映像はどんどん、帝政全盛期の宮殿をフィクションか幻影かはたまたドキュメンタリーか錯覚を起こさせながら描く。全編90分ワンカットのカメラで描く映像はもう圧巻としかありません。
そして映像は、クライマックスの大舞踏会の場面へ流れていく。巨大という表現が当てはまる部屋に何千、いや何万という豪華なドレス衣装を纏った人たちが踊る。そして舞踏会が終わり、廊下、階段を埋め尽くす人人人。彼方まで埋め尽くされた大群衆をカメラが追いながらゆっくり窓の外へ移動すると外は海である。こうして映画は終わっていく。
驚くべきは、オープニングが明らかに普通の季節なのに、途中エカテリーナ大帝が雪の中庭に出ていく場面があること。一体どういう風に撮っていったのかと目を疑ってしまう。恐ろしいほどの大作、それがこの作品を形容する言葉かもしれません。見事でした。
アンドレイ・タルコフスキー監督の晩年を捉え、当時のソ連の姿を交えながら描いたドキュメンタリーです。「サクリファイス」撮影時のタルコフスキー監督の姿が切ない映画でした。監督はアレクサンドル・ソクーロフ。
大勢の子供達が飛び出して来る。それを捉えるカメラ、映画を撮影する場面から映画は始まる。アンドレイ・タルコフスキーが、晩年の一本「ノスタルジア」を制作しているという流れから始まり、ブレジネフの死など当時のソ連の姿を背景に捉えていく。
ソ連本国で映画を作らせてもらえないところから、海外に拠点を移す決意をするタルコフスキー。そして、ヨーロッパに移り、遺作となる「サクリファイス」撮影に臨む。折しも気管支ガンに冒されていた彼は、作品完成と共に亡くなる。
精力的に映画作りをするタルコフスキーの姿と、ソ連時代に貧しかった彼の姿を描くドキュメンタリーで、タルコフスキーのファンとしては一見の価値のある一本でした。