くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「パリより愛をこめて」

パリより愛をこめて

一級品のアクション映画にそろっているべきものは、まずストーリーが単純なこと、登場人物が外見も性格もわかりやすく区別がつくこと、セリフやショットの中にさまざまな伏線がちりばめられていて、それがストーリーを牽引しラストで最大の効果を発揮すること。ではないかと思う。

そんなアクション映画に必要な要素がすべてそろった抜群に面白い一級品の映画がこの「パリ尾より愛をこめて」でした。

なんせ、タイトルが「パリより愛をこめて」って、まさに「007ロシアより愛をこめて」にかけた題名からにんまりしてしまう。
主人公ジェームズ(これもジェームズ・ボンドを意識)が勤めているアメリカ大使館への通勤シーンというスローなショットからタイトルバック。実はこのジェームズ(ジョナサン・リス・マイヤーズ)はアメリカ大使の補佐官である一面とCIA捜査官という裏の顔(しかも見習い)がある。

補佐官の仕事の合間にたわいのない任務で二つの顔をこなしていた彼にある日超一級の任務(をしきる相棒の運転手)の仕事が来る。この相棒こそハチャメチャなチャーリー・ワックス(ジョン・トラヴォルタ)なのだ。

しかしこの男、少々荒っぽいが抜群に頭が切れる、状況判断も見事、まさに男の子が惹かれるアンチヒーロー
フィアンセであるキャロリンと会うかたわら仕事に出かけるジェームズであるが、そこでチャーリーと命がけのはでな任務に巻き込まれていく。

二人の会話にちりばめられたセリフにこめられるちょっとした伏線が見事で、一言も聞き逃せない。それがあるときはストーリーのキーワードだったり(盗聴器の数などなど)、過去の映画へのオマージュ(宇宙大作戦リーサル・ウェポンなどなど)だったりとサービス満点。

前半で中国人の麻薬組織との銃撃戦で舞台になるマネキン工場はクライマックスで高速道でテロ組織の車をバズーカでぶっ飛ばしたあとに焼け焦げて転がるキャロリンのマネキンダミーの伏線であったり、中盤から後半、あまりにも残酷な真相に向かい合う前に、チャーリーとジェームズが食べるハンバーガーの空袋が、二人が画面からフレームアウトした後にしばらく残るシーンでこれからの展開への転換点にするショットも見事。

ストーリー展開のスピーディさはもちろんですが、脇に登場するさりげない登場人物にも細やかな設定がされている。
クライマックスでチャーリーが乗る車の運転手をするCIAの捜査官、なんとも猛スピードで右に左にハイウェイを抜けていく運転技術は超一級。しかもあえて名前も明かさないところがこの映画の余裕でもある。

見せる、見せる、しかも二転三転していきながら核心に迫っていくストーリーに充実感満点で楽しめる。そして迎えるラストはちょっと切ないものの、妙にお涙頂戴にせずに幕を引く。

アメリカに帰るチャーリーと空港でチェスをするジェームズであるが、これは明らかに冒頭、大使とチェスをするシーンに絡めて、これからはチャーリーがジェームズの相棒だといわんばかりのにんまりさせるショットである。

もちろん、アラを探せばあるかもしれないが、そんなものは吹っ飛ぶほどに最高のアクションでした。