くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「座頭市THE LAST」

座頭市THE LAST

SMAP香取慎吾座頭市を演じる。それもそれでちょっと興味がある。しかも監督は阪本順治となればおもしろそうな組み合わせでもある。しかし、できばえは、懲りすぎた映像についていけない俳優たちの演技、物語が単純なようでぶっきらぼうに進んでいくので、今ひとつ見所に欠ける。その上、それぞれの登場人物が描き切れていないためにドラマ性が薄い。というのが感想です。

もちろん、今の世の中、かつてのようなしっかりした時代劇を期待することは不可能です。ロケ地にしても、演じる俳優にしてもどうしても現代的な姿になってしまう。時代劇がテレビや映画からほとんど姿を消した中では、時代劇を知らない世代が時代劇をするのだから無理があるのが当然。そこで、監督は映像に工夫を凝らして、現代劇とは少し異質な映像づくりをしようとする。正当に演出すると嘘っぽくなりがちだからだ。

映画が始まると竹林をしたから空を見上げたショットで始まる。竹林の中を駆け抜ける座頭市の姿、フラッシュバックで時間をさかのぼり結婚を決めたタネ(石原さとみ)とのツーショットを細切れに挿入しては竹藪でのやくざとの斬り合いのシーンへ戻る。そして、タネが座頭市をかばって刺し殺されるシーンで物語は本編へ。

生い茂る竹林、それに続く雪のシーンや山々の自然のシーンが技巧的で美しい。そんな中で真っ赤な布を首に巻いた市の姿が映し出されるとまさに映像美をねらった意図がはっきり見える。
海辺の漁村に帰ってきた市がもう一度百姓に戻るべく仕込みの杖をすて、生きる姿を前半部で描く。そこへやってくるいわゆるおきまりの悪者、その首領が仲代達矢扮する天童。

ところが、天童も含め彼の手下の腕の立つ用心棒にせよ、村の人々の衆生人物の姿が今ひとつ存在感がなく、全部がひとかたまりの群衆にしか見えない。そんな中で香取慎吾自身もそれほどの演技力もないので埋もれてしまっている。にもかかわらず阪本順治の映像に凝った演出が施されていくので、映像ばかりが目立って人間が影が薄くなっているのである。

ストーリーは勧善懲悪ものなのだから、もっとおもしろくみれて当然なのに、なぜかしんどくなるのはちょっといただけない。

勝新太郎座頭市勝新太郎のカリスマ的な存在感と抜群の運動能力による殺陣のすばらしさが人気シリーズを引っ張っていったのである。従って、ストーリーが少々稚拙でも勝新太郎がいれば娯楽映画として成り立ったのである。
しかし、アンチヒーローとしての強さを秘めるべき主人公座頭市が今ひとつである香取慎吾版(もちろん、ほかのバージョンも同様)は、結局娯楽映画にも芸術映画にもなり得なかったのだと思う。

非常に残念ですが、今ひとつだったというのが私の感想です