くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「告白」

告白

大ファンである中島哲也監督作品。今回はシリアスなミステリー調の社会ドラマである。
めくるめくような生徒たちの姿、その中で埋めれてしまいながらも語り続ける先生の姿がスローモーション、クローズアップを繰り返しながら写されていく。
中島哲也の感性がもたらすこの導入部は今までの作品のサイケデリックな映像とはうってかわって、モノクロームのような薄いブルーによる陰湿な映像である。

やがて、語っている教師森口悠子(松たか子)の姿が現れ、タイトルバック。しかしタイトルの下にそれぞれ今語られている人物の名前が副題になっている。
冒頭から彼女の娘が事故死、いや殺され、その犯人に彼女はある復讐のきっかけを作ったことを語る。

笑い声や時に先生の言葉に反応する生徒たちの姿は妙に人間味が全くない。いやそれより教師たちも、そして生徒の親たちもどこか生きているように見えない。にもかかわらず、人間ドラマのごとく映画いていく映像展開が不気味なほどに殺伐としていてクールなのです。

熱血教師の姿も妙に滑稽で、子供を溺愛する母親の姿も妙にコミカル。社会ドラマの一歩手前で展開する上質のミステリアスな復讐劇。
次々と不思議な感覚で描かれる映像の数々が、非現実味を持たせてくるので、なおいっそう謎が深まっていく。

フラッシュバック、スローモーション、デジタル映像と、例によって中島哲也ならではのテクニカルなシーンも繰り返されるが、次第に最初の伏線が意味をなさなくなった後のクライマックスの急展開は見事である。
これを一級品のサスペンスで締めくくって、おもしろかったと拍手できない不思議な魔力も兼ね備えたラストシーンは何ともいえない。

今までの作品とちょっとテーマは異なるものの、中島哲也オリジナリティの爆発した傑作だったと思う