4つの物語の同時並行で進むいわばオムニバス映画である。
肩の凝らない気楽な作品で、それぞれの登場人物が醸し出す、ちょっとエロティックでちょっとグロテクス、それでいて、憎めないほどの人間像が魅力の映画でした。
画面が始まるととあるビーチで夕日を見つめる恋人らしい二人の後ろ姿、いきなりこの映画のテーマが流れタイトルが映し出される。つまり、ここからすでにダマシが始まってますよといいたいのである。その意味はラストシーンで明かされますが、ここはまず物語を追いましょう。
一人の男性がクローズアップ、目を覚ますと電話がりんりんと鳴っている。りんりんだから、当然枕元の古いダイヤル電話だろうと思ったらその横の携帯電話の着信音。やってくれるね。
続いて、その部屋にやってくるキャンディこと麻生久美子扮するコールガール。二人のやりとりがだましだまされながら、舞台は別の部屋へ。
こうして次々と四つの部屋の四つのダマシあいのドラマが展開するのですが、それぞれが微妙なところですれちがいつながっている。そのあたりが絶妙のタイミングとそれぞれの部屋のストーリーのおもしろさが絡んでいけばよかったのだが、なぜかどこかリズムが合ってこない。
四つの話はそれぞれ興味満点で、次はどうなるのかと思うのですが、だましあいを楽しむならダマシのネタをかいま見せて、それに翻弄される登場人物を見せていくのがおもしろいと思うのですが、そのポイントが微妙に伝わり切れてないのでしょうか?
結局、麻生久美子の物語がエンディングで真実であったにもかかわらず、行き違いの切ない幕切れでどうにも後味が悪いし、古田新太扮するスーパーの社長の物語の締めくくりも今ひとつじわりと胸に迫らない。ほかのストーリーももう一つ幕切れが頼りない。
それぞれの話がそれぞれ十分に描き切れていないのか個性派の俳優を集めすぎて、その存在感に食われてしまったのか、おもしろかったのに、今ひとつ「ああおもしろかった」と充実感で劇場をでれなかったのはどこか無理があったのだろうと思う。