くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「あの夏の子供たち」

あの夏の子供たち

パリの街角、美しい建物と降り注ぐ陽射し、そしてパステル調の色合いのタイトルがテンポのいい音楽をバックに次々と入れ替わる。この映画の出だしは一気にリズム感ある画面で引き込んでくれます。
タイトルクレジットが終わると、建物からなにやら忙しそうに携帯電話を片手にでてくる一人の男性、彼は映画会社を運営するグレゴリー、この映画の主人公である。

車に乗っても片時も携帯電話をはなさず、2台の電話を交互に話たりもする。その様子を短いカットの積み重ねで見せていく。この映画、このカットのつなぎが本当に美しい。ほとんどのショットが短いシークエンスとカットの繰り返しで、そのつなぎを実にテンポよくつないでいくので、めまぐるしい反面、軽やかでさえある。

仕事を一段落したグレゴリーが家庭に帰ると、かわいらしい幼い二人の娘がじゃれ合うようにまとわりついてくる、ちょっと年上の長女も、やや大人ぶっているとはいえ、父親になついている。愛する妻もそんな夫や子供に囲まれ、本当にほほえましい家族の姿である。娘たちの笑い声はきらきらする光のようにまばゆいし、姉の姿もまだまだ初々しい可憐さがある。

時に外の景色に場面が及んでも、降り注ぐ日差しはまぶしいくらいで、この家族の幸せを増幅させているような感さえも持つような画面づくりが続く。
しかし、久しぶりのイタリア旅行へ出かけても夫は携帯電話を離せず仕事に没頭、そんな姿を娘たち、そして妻もややうとましくも思っているが、そんなシークエンスはほんのわずかである。

しかし、やがて会社は行き詰まり、資金の工面に困窮した夫グレゴリーはピストル自殺してしまう。
ここからがこの映画の本編なのでしょうか?娘たちはそれぞれに悲しみのそこからはい上がるために毎日を過ごし、妻は夫の会社の整理に忙しくすることで紛らわそうとする。そんな中、グレゴリーのかつてもうけた息子の話が浮かび上がってくる。困惑する長女はその息子を訪ねるもあえず、このシークエンスがさりげなく閉じたのはこの映画の成功の原因かもしれない。

グレゴリーの死後、それぞれがそれぞれに悲しみを乗り越え、会社も精算して、みんなでタクシーに乗ってイタリアへ、背後にケセラセラが流れて映画は終わる。

暗い面にあえてのめり込まず、それでいて家族が再び前向いていこうとする姿を描いたこの作品。そんな物語をイタリアの美しい景色や、パリの日差し、気持ちが晴れやかになるような画面づくりやリズミカルな音楽の挿入で、さりげなく描いたのが本当に好感でした。後味のよい映画でした