くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「パリ20区、僕たちのクラス」「コロンブス永遠の海」

パリ20区、僕たちのクラス

「パリ20区、僕たちのクラス」
カンヌ映画祭パルムドール賞受賞の話題作である。
映画が始まってしばらくして、これはドキュメンタリー映画なのかと疑ってしまった。解説にも書いてあるとおり、教室の中で教師に一台、生徒に一台、教室全体に一台とカメラを向けて撮影したのだそうで、すべての登場人物も素人ゆえのリアリティだったのかもしれません。しかもドキュメントタッチの映像なので手持ちカメラも多用しているため画面がかなりゆれます。

しかし、アメリカのドキュメントもどきのSFのように、ふりまわしてみている私たちがくたくたになるほどのカメラ撮影はしていません。そのうちに慣れてきてストーリーを追い始めました。といっても、ストーリーらしいものはあまりみられず、教室で国語の授業が行われる様子が中心になります。そして、時に生徒と教師の会話の応酬、職員室での会議の様子、などが挿入される画面づくりです。

ほんの些細な教師と生徒の言い争いから一人の生徒を退学させるかどうかという問題になるのがクライマックスですが、そういう話に至るまで、常に主人公である国語の教師はひたすら、教師に対する礼儀、人間としての守るべき最低限の言葉遣いを徹底的に生徒に指導します。そうした指導に、反感はするものの、最後には従う生徒の姿も今時で見せてくれます。

パリの移民たちが混住する地域の特殊性をさりげなく、授業や生徒たちとのやりとりの中に挿入しながら描いていくドキュメントタッチのストーリーは、見事に一つにまとまったがために秀逸な一本として完成され、それゆえにパルムドール賞を受賞する結果になったのでしょう。

物語が終わって、教室の外で、教師と生徒たちがサッカーで遊ぶ。カメラは誰もいない教室をじっと写して映画が終わります。
こうした演出で見事に一本にまとめ上げているので、作品としてレベルは高いかもしれないけれど、ある意味で一発物的であり、私個人としてはあまり好きではない映画ですね


コロンブス 永遠の海」
101歳になるポルトガルの巨匠マノエル・ド・オリヴェイラ監督作品。
コロンブスは実はポルトガル人だったという説に基づいて制作された作品で、主人公の歴史研究家マヌエル・ルシアーノがポルトガルからアメリカに渡り、アメリカで生活するうちに自らの説を証明するべく妻と奔走する姿を描いている。

とはいっても左右対称の構図を徹底的に踏襲し、すっきりした洗練された画面で、淡々と描かれる物語は正直きついです。
主人公とその妻の服装などにブルーやイエロー、レッドの色彩を入れ込んだり、背景も鮮やかな色彩で押さえたりといったヨーロッパ映画らしい色彩演出も見応えがあるのですが、マヌエルとその妻(監督夫婦自らが演じる)の仕草が何とも素人すぎて、時に目に付くのがなんとももったいない。

所々に、剣をもった女性がたたずんだりするショットを挿入し、ちょっとシュールなイメージも持たせながら落ち着いた雰囲気の美しいシーンの連続、さらに抑揚のない脚本がなんとも受け入れにくいところがありました。