くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「幕が上がる」「くちびるに歌を」「シェフ 三ツ星フードト

kurawan2015-03-03

「幕が上がる」
劇作家平田オリザの作品を、ももいろクローバーZを主演に描いた青春ドラマ。ゆるい、とにかくゆるゆるの映画である。

ももクロの演技が余りにも素人臭いというのもあるが、その素人臭さを生かしきれなかったのがちょっと残念。監督は本広克行である。

映画は、河原で三年生になった演劇部のさおりらが、台本などを燃やしているシーンから始まる。いよいよ演劇部最後の年を迎えようとして、新しい部長にさおりが選ばれる。

そんな演劇部が、稽古場の教室で、新任の吉岡先生と出会う。なんと彼女は演劇の女王と呼ばれた元女優だった。

こうして吉岡の元で、高校演劇の大会を目指すことになるさおりたちの学生生活を描いていくのが本編。

ゆっくりとカメラが学校の中を巡っていき、その中でお芝居が展開。ともすると平凡になるところに動きがでるのが、黒木華演じる吉岡が登場してからである。そして、さらにさおりが台本作成に悩んでいくあたりの遊びシーン。

このあたりで、舞台劇ではなく映画であると認識していくとおもしろいが、そのあと、また元のテンポに戻ってからの終盤までが、ちょっと平凡なのがもったいない。

時々、いいシーンがあるのですが、どうも乗り切れないままに、ラストシーンを迎える。

本当にゆるゆるの一本。気楽に楽しむにはもってこいの映画でした。


くちびるに歌を
今日はゆるゆる映画の日である。この作品も何の変哲もない、普通の感動ドラマ。いや、こういうオーソドックスな作品が、映画の本質かもしれない。正直、胸が熱くなったのだから。それがはたして涙もろくなっただけなのかどうかはともかく、本当に懐かしさを感じる作品でした。監督は三木孝浩。

映画は、五島列島の小さな島を舞台に、友人ハルコの、出産に伴う臨時教師に、東京からやってきたユリの物語。

ユリは、元ピアニストだが、恋人の死を境に弾けなくなっていた。

ハルコの代わりに合唱部の顧問も務めることになったユリは、そこで、生徒たちのそれぞれの生活と向き合いながら、自分も成長していく。

本当によくある話で今更である。名作「二十四の瞳」を意識した叙情的なカットもあるものの、ストーリーは普通な展開で、セオリー通りに進んでいく。

それぞれの生徒たちのドラマの描写が弱いために、主人公ユリの成長ドラマも引き立っていないし、ハルコの出産というクライマックスもそれほど盛り上がらないが、新垣結衣を見るのも目的だったのだから、これで良かったかなという感じである。


「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」
それほど期待もしてなかったのですが、これが結構楽しい映画でした。なんといっても歯切れの良いテンポに乗せて、ストーリーがどんどん展開していく流れが心地よいのです。

手際よく料理をする主人公カールの姿から画面が始まる。ビートの利いた曲がバックに流れ、厨房の喧噪と、手慣れた主人公のキャラクターを見事に描写するファーストカットがうまい。

有名レストランのシェフ、カールは、独自のメニューに常に挑戦しようとするが、頭の古いオーナーの反対に悩まされている。ある日、とうとう切れてしまい、辞めてしまう。

直前に、批評家に悪態をつく場面がネットに流れ、再就職もできないままに、元妻の提案で息子のパーシーと家族の原点のマイアミへでかける。そこで、元妻の元夫からフードトレーラーを譲り受け、そこで、料理を始めるが、それが当たる。

こうして、マイアミからロスまでの帰り道で、かつての部下も駆けつけ、どんどん話題になり、とうとう、ロスにつくと料理批評家からの投資の申し出で店を出すことに。そして、家族も再び一つになりハッピーエンド。

全編にテンポのよいリズム感が漂う佳作で、カールとパーシーの親子愛の話もさりげなく挿入され、とっても気持ちよくなって映画館をでることができた。

アメリカ映画らしい、さっぱりした明るさと、陽気なリズムに包まれた物語、ちょっとした一本でした。