くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「いとこ同志」「美しきセルジュ」

いとこ同志

クロード・シャブロル監督の代表作であり、ヌーベルバーグ初期の秀作二本を見る。
いとこ同志
これは見事な映画でした。いわゆる完成度の高い作品と呼ぶべきでしょうか?カメラの使い方、画面の構成の見事さ、ストーリー展開のうまさ、さらにアンリ・ドカエの見事なカメラ、音楽のテンポの良さ、どれをとっても一定水準以上のレベルの見応えのある映画でした。

駅の改札が映し出され、カメラがゆっくりと夜の町へ、そこへ改札をでた主人公シャルルが登場、タクシーに乗って、パリで暮らすいとこのポールのところへ向かうシーンから映画は始まります。
タイトルがゆっくりと音楽に合わせて白抜きで映し出され、それが終わると、タクシーは目的地へ。その入り口で管理人のおばさんとのやりとりの後、ポールの部屋へ、まさに物語に引き込んでくれる導入部です。

一方のいとこのポールは遊び好きの青年で、同じく法学士の試験を目指すシャルルと好対照の性格と生活をしています。
きまじめで、勉強ばかりのシャルルと正反対ですが、仲のよい二人はことあるごとにポールの知り合いのバーやクラブで女友達を含め多彩な友人たちとのパーティーに巻き込まれます。
そんな中でシャルルは一人の女性フローレンスと出会い、恋に落ちます。しかし、そんな二人の恋物語も、ふとした待ち合わせの行き違いの時にポールとフローレンスは恋仲に。

アンリ・ドカエの撮影も見事ですが、クロード・シャブロルの画面の構図もなかなかで、二階と一階が二段ベッドのようになった部屋をワンショットでとらえたり、シャルルの勉強する部屋の奥にシャワールームがしつらえてあるおしゃれな部屋の設定を効果的に利用して、遊びほうけるポールにいらだたしさを覚えるシャルルの姿を見事に演出して見せます。

そして、試験、遊んでいたように見えるにもかかわらず、ポールは合格、数日後、シャルルは不合格となり、何においてもうまくいくポールに嫉妬したシャルルはロシアンルーレットよろしく、一発の銃弾を入れた拳銃を眠っているポールに向けて引き金を引きます。しかし、ここでもポールの運は失われることもなく。翌朝、玉が入っているとも知らず何気なくポールが社売るrに向けて引き金を引いたところ、一発の銃弾が。
好対照の人生を見せる二人の姿を、カメラが追った後、ゆっくりとレコードのターンテーブルへ、そして音楽が終わってレコードピックがあがり、FINの文字がでます。見事なラストシーンですね。


「美しきセルジュ」
もう一本は、正当なストーリーで展開するヌーベルバーグ初期の作品。
一台のバスが、遙か山の彼方からこちらへ走ってくるシーンから映画が始まります。
いとこ同志」同様の白抜きのタイトル。やがて、ある村に着いたバスから主人公フランソワが降りてくる、彼は病気の療養のために10数年ぶりに故郷へ戻ってきたのです。そこで出会う幼なじみのセルジュ。すっかり変わった村の中で、セルジュとの関わりを取り戻しながら、セルジュの妻イヴォンヌの妹マリーとの関係を始める。

それぞれの生活の中で、酒浸りの毎日を送るセルジュをいたわりながら、自分の生き方も見つめるフランソワの姿を描いていくという正当な物語展開で、ある意味で、ヌーベルバーグらしからぬ部分がないでもない。しかし、ここでもアンリ・ドカエのすばらしいカメラが、田舎の村の景色を見事にとらえ、季節感も映し出しながら作品をバックアップしていく様は見事である。

一人目を死産し、それもあって、自暴自棄になっているセルジュを暖かく支えるイヴォンヌ、さらにそんなけなげな生活を何とかしようと奔走するフランソワ。そしてフランソワの気持ちをわかりながらも、やるせないセルジュの姿が素朴で美しいのもこの映画の見所かもしれません。

産気づいたイヴォンヌを助けるべく、雪の中、自分の体のことも忘れて走り回るフランソワの姿は痛々しいほどに切ないけれど、例によって飲んだくれていたセルジュが赤ん坊の泣き声を聞いて、喜々として喜ぶエンディングのショットはそれまでのわだかまりが一気に晴れる見事なラストシーンでした。