くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「エクスペンダブルズ」「大奥」

エクスペンダブルズ

「エクスペンダブルズ」
とにかくやりたい放題に、叩きのめすは殴るは蹴るは投げるは、はたまた破壊の限りを尽くして爆破するはと、アクションシーンの固まりである。しかも、そのアクションシーンが実にスピーディで歯切れがいい上に小気味良いからすかっとする。非常に細かすぎるほどのカットを積み重ねて次々と様々なスタントシーンがこれでもかと展開していく。それもよく似たアクションの繰り返しではなくて、ちゃんとそれぞれの登場人物が個性的に大ああばれするのだから、痛快なのだ。

映画がはじまると、とあるテロリスト集団がなにやら人質をとって金を要求している。よくあるシーンであるが、そこへスタローン扮するバーニーらの傭兵軍団が登場、一気に派手に片を付けるところから映画が始まる。状況をまず説明する常套手段であるが、このショットはちょっと物足りなさが残った。そして、数台のバイクが一軒のバーに集まってくる。バイクにはエクスペンダブルズ(使い捨て軍団)とロゴが入っている。

彼らが何者で、どういう組織なのか全く説明されぬままに、CIA(ブルース・ウィリス)から新しい仕事の依頼がくる。とある小国ヴィレーナの独裁者ガルナ将軍を始末してほしいという。一体全体訳の分からないストーリー展開であるが、そんなものはこの映画には関係がない。

例によってまず、偵察のためにバーニートとクリスマス(ジェイソン・ステイサム)がのりこみ、一人の女性サンドラと知り合ったあとすんでのところで脱出。バーニーたちの提案で一緒に脱出してこなかったサンドラを助けるためにふたたび傭兵たちが集まって乗り込む。全くはちゃめちゃである。

アメリカでのカーチェイスシーンも駒落としを駆使したハイスピードのアクションシーンが本当にスピーディでわくわくするが、クライマックス。ヴィレーナヘ乗り込んだ傭兵たちが爆破の限りを尽くし、戦闘の限りを尽くして救出するまでのはでなこと。いけ!いけ!と応援したくなるほどの派手なシーンは血沸き肉踊るというのはこのことだと言わんばかりである。

なんせ、大砲の球を投げてピストルで撃って大爆発させるショットなど、思わず笑ってしまった。

ガルナ将軍の住む屋敷が次々と爆破され崩れ落ちていくクライマックスの豪快さ。ハイスピードなアクションのおもしろさ。中身は何にもないけれど、これがアメリカ映画だと言わんばかりである。
結局、助けた女はその国に残して男どもだけがアメリカへ。そして、バーからバイクででていくシーンでエンドタイトルになる。
スタローンは全く、立派だ。非難を浴びてもこれだけのアクションスターを一堂に集め、自ら年をとったと二度もせりふを入れた開き直りながらも徹底的なエンターテインメントを求める。今のアメリカに求められるのはこれだと言わんばかりの顔が目に浮かぶようでした。痛快!


「大奥」
久しぶりに日本映画として大作らしい豪快なエンターテインメント映画に出会いました。
超望遠ズームとクレーンカメラを大胆に使った豪快な演出、オーソドックスなアメリカ映画的な仰々しい音楽効果の使い方、それでいて緻密に見せ場を組み立てられた丁寧なストーリー展開、最近では珍しいクラシカルな大作らしい映像づくりを堪能した映画でした。

しかも、演じる役者たちが実にしっかりと時代劇を演じている。もちろん、容姿や立ち居振る舞いは時代劇全盛期の俳優たちとは格が違うかもしれませんが、そこにモダンな味を含ませながら基本的な所作を怠らない演技付けの演出が見事。さらに、細かい部分も決しておろそかにしない。たとえば道場で汗を流し、上半身汗だくの姿でお信の弁当を食べるために寺の境内へ、ひとときの時の流れを感じさせるため、汗が半分近く乾いた着物になっている心配りなどがすばらしい。

映画が始まると、男子のみがかかる疫病の説明、そして男子の数が女子の四分の一になってしまったという背景を的確に説明。大奥の扉のアップからカメラは超望遠でズームアウト、柴咲コウ扮する将軍が扉のところへ現れ、周りを見渡して一人の侍水野(二宮和也)に目を留める。そしてあのテーマ局から画面は変わって、水野が道場で汗を流して暴れているシーンへ。そこへおのぶが弁当を持って現れる。

貧乏旗本の水野の家で、何とか役に立たんと思った水野は大奥に上ることに。一気に物語を本編に放り込んで、大奥でのしきたり、陰謀渦巻く大奥の姿をさりげなく見せ、その中で天性の才覚で次々と水野が認められていき様が見所として見事に描かれていきます。やがて、幼少の将軍が死に、次期将軍は吉宗(柴咲コウ)に。

今回の柴咲コウはなかなかの演技で、びしっと将軍の存在感を演じる姿は目を見張る。言葉遣いで威圧する演技の見事さに嫌いだった彼女が好きになってしまった。

そして、大奥への初渡り、ふとしたきっかけで水野を見初めたものの、しきたりにより初夜となったために水野は将軍との一夜の後切腹せざるを得なくなる。
切腹シーンへ続くショットで次第に感情がわいてきて自然と涙が流れた。
しかし、物語はさらに続く。将軍はそんな水野を不憫に思い、生まれ変わった町人として巧みに助け、墓の前で弁当を持参してきたお信(堀北真希)と再会。町人新吉としてうまれかわることになる。もちろん、とってつけたようなハッピーエンドかもしれないが、それが全く違和感がない。冒頭から徹底したクラシカルな娯楽映画色故にさりげなく迎えるラストシーンなのだ。

さらに続いて、吉宗は大奥の美男子50人を暇をとらせるという英断によって映画が終わる。
傑作とか、名作とかではないかもしれない。しかし、大胆な演出と、しっかりした演技付け、さらに観客の心をつかんだ音楽効果のうまさ、どれをとっても娯楽大作にふさわしい演出が徹底されている見事な作品であることにかわりはなく、こういう映画作りをもっと今の若い監督は見習うべきであると思う。

期待していなかっただけに、本当の掘り出し物のいい映画でした。ラストは胸が熱くなってしまいました。