くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「やっさもっさ」「修禅寺物語」

kurawan2014-07-30

「やっさもっさ」
横浜を舞台に、米軍兵士や外国人とのあいだにできた孤児を預かる双葉園の理事亮子を中心に風刺劇のごとく描く、いわば戦後の日本の歴史の一ページを知るような作品である。

監督は渋谷実、決して優れた映画とはいえないが、戯画化された描写で描いていく登場神仏のそれぞれが、ちょっとおもしろい。、主演の淡島千景東山千栄子以外はかなり荒っぽいキャラクターと演技で登場するし、夫四方吉の描き方はかなり雑であるが、これは意図したものだろう。

物語はこの双葉園の物語を中心に、かつて敏腕の商社マンであったが戦後ふぬけのようになった四方吉が、やがて、一人の実業家の元で仕事を始めるエピソード、、亮子が外国人実業家と淡い恋に落ちる話、黒人兵士シモンとバーズカお時というパンパンのエピソードと、お時の子供トムのエピソード等々が、乱立するように描かれていき、終盤で、無理矢理かと思われるように絡み合ってくる展開になっている。さらに、外国人実業家が二本を食い物にし、独立と同時に去っていくという当時の世相もしっかりととらえている。

これという秀でた構成でも演出でもないが、当時としてはこのマンガチックな描写は斬新であったかもしれない。

映像にもそれほど優れたシーンはみられない。ただ、こういう戦後があったという史実をちゃかすように風刺していく描写はおもしろい作品で、それだけでも、必見の一本だったと思います。

クライマックスが、この時代の映画によくある火災シーンで大団円という趣向は、まぁ、これもありかなと思いますが、淡島千景東山千栄子のような大女優ほかを余すところなくこういう映画に使った、この時代の映画の豊かさにうならされる映画でした。


修禅寺物語
淡島千景岸恵子二大女優を配した、女性映画の名匠、中村登の一本である。

岡本綺堂の原作は近代歌舞伎の傑作と呼ばれる作品で、そのエッセンスは見事に映像として昇華していたが、いかんせん、物語の中心が頼家に傾倒していたために、いくら淡島千景が存在感のある演技力があっても、さすがに、影の存在に見えてしまったのが残念。

物語は、鎌倉時代、時の二代将軍頼家は名ばかりの将軍で、執権の北条時政北政所のいいようにされている。その不満が募るばかりで、将軍でいることに嫌気がさしている。

一方、希代の能面師夜叉王の娘桂は、田舎暮らしを嫌い、末は将軍の側女となり出世することを望んでいる。

この二つの物語を描く時代絵巻で、その中心が、将軍の権力を我がものにしようとする時政と頼家の取り巻きの権力争いが中心になる。

しかし、一人は、将軍であることを嫌い、一人は将軍の側女になることを望む二人が急接近し、愛し合うに及ぶクライマックスへの心理変化の物語は見事で、さすがに中村登の園出力がさえ渡るが、いかにも、出世だけを望む軽い女として描く桂の存在が、妙に浮いている。

一方の頼家がやたら奥の深い人間性を見せるので、このちぐはぐが最後まで埋まらなかった。

ラスト、時政、実朝らの画策で修禅寺が闇討ちにあい、桂と頼家が死んでいくクライマックスが今一つ盛り上がりきらなかったのは、後半部分のドラマ演出の弱さであろうか。

それでも、原作のいわんとする物語はしっかりと伝わる、ラストの炎上シーンにいたる展開場面はなかなかのもので、胸に迫るものがありましたが、やや遅かったかな。

後一歩名作に届ききらなかった作品という感じでした。