くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「白頭山(ペクトゥサン)大噴火」「沈黙のレジスタンス ユダヤ孤児を救った芸術家」

白頭山大噴火」

見せ場はあるけど中身はない。矛盾はあるけどリアリティはない。典型的な韓国娯楽映画で、脚本が良くないのかダラダラと長く感じたものの、ラストまではなんとか飽きずに見れた感じです。できのいい映画ではありませんでした。せっかくタイムリミットによる緊迫感を作りながら中盤のやたらふざけた演出が目立つのもどっちつかずで間延びしてしまった感じです。監督はイ・へジョン。

 

除隊間も無くのインチャン大尉が最後の仕事をしている場面からゆるっと始まる。彼の妻は妊娠していて、現場を離れて戻ってきてほしいと懇願している。ところが、北朝鮮と中国の国境にある白頭山が突然噴火、半島全域が壊滅する。さらに、75時間後にさらに巨大な爆発が起こるとカン教授が予言、その対策として、北朝鮮が持つICBMから核を取り出して、それで、白頭山の麓の炭鉱で爆破してマグマを流出させる作戦が計画される。折しも、米軍により北朝鮮非核化が進みICBM搬出作業が進んでいた。

 

北朝鮮でスパイとして拉致されているジュンピョンが、炭鉱内やICBMの存在場所に詳しいというので、彼を救出して案内させることになる。インチャンは技術部として作戦参加を強制されたが、本隊の乗った輸送機が墜落、インチャンら技術部隊だけで作戦を遂行することになる。あとは次々と見せ場の連続で、アメリカ軍も関わってきての銃撃戦が繰り返されるが、何故か北朝鮮の軍隊がほとんど関わってこないという大矛盾。

 

なんとか核を取り出して目的地を目指すが、ジュンピョンは炭鉱への地図を飲み込んでしまい、彼の安全を確保しながら同行させざるを得なくなる。一方で、ジュンピョンは娘と国境を越えさせてやるという北朝鮮からの申し出もあり、インチャンは妻のことが気掛かりだという頼りなさも加わりのてんこ盛りの見せ場の連続。そして、最後の最後に爆破場所が変更され、インチャンとジュンピョンが二人で向かうが、最後でジュンピョンが、自己犠牲で爆弾を抱えて炭鉱深く降りていく。そして無事爆破され、噴火は食い止められる。インチャンは、妻と幸せな日々を送っていますというラストで映画は終わる。

 

まあ、悪く言えば支離滅裂な展開で、中盤のインチャンとジュンピョンとのコミカルシーンは余計としか見えない。しかも、韓国上層部の気迫も伝わらないし、アメリカ軍に至っては完全に余計な登場になってしまっている。適当に作った娯楽映画という感じのできの悪い韓国映画という仕上がりでした。

 

「沈黙のレジスタンス ユダヤ孤児を救った芸術家」

非常に良質の一本で、カメラも美しいし、ストーリー展開も良くできてるし、全編にわたる緊張感もうまい。しかもキャラクターそれぞれもしっかり立っているのですが、どこかもう一歩物足りなさを感じるのはなんなのでしょうか。もうちょっと傍の場面もしっかり描けていれば傑作になったかもしれない、そんな映画でした。監督はジョナタン・ヤクボウィッツ。

 

1938年、ドイツ、あるユダヤ人家族の娘を寝かせる父のシーンから映画は幕を開ける。娘の名前はエリスベート、突然物音がして部屋の外に出ると、両親が連れていかれる場面を目撃する。シーンが変わると、1945年、ニュールンベルグで、アメリカのパットン将軍がある人物の紹介をしようとしていた。

 

再び1938年フランス、娼館でパントマイムの舞台を演じるマルセルの姿、それをじっと見つめる彼の父シャルル。舞台にしか興味のない、マルセルはジョルジュに誘われ、ドイツから移送されてくる孤児の世話を手伝ってほしいと頼まれる。気乗りのしないマルセルだが、密かに慕うエマもいたこともあり、大勢の少女がバスでドイツ国境からフランスへ移送されてくるのを見て、自然と彼女らを助けようとする。連れてきたのはマルセルの兄アランだった。

 

騒ぐだけの彼女たちを得意のパントマイムで引きつけたマルセルは子供達の人気になり、子供たちも心を開き始める。しかし、ナチスの侵攻は激しく、マルセルたちは子供らを連れて南フランスへ疎開することにする。そして子供達の面倒を見てくれる家族や教会を世話する。マルセルはレジスタンス参加をジョルジュに希望し、ユダヤ人のレジスタンスに参加、アランの恋人でエマの妹でもあるミラも一緒に活動する。

 

しかし、南フランスにも侵攻してきたナチスユダヤ人迫害は激しさを増し、指揮をするバルは非情な手段で次々とレジスタンスを追い詰めてくる。そして、女性のレジスタンスだけの時にナチスに踏み込まれ、エマもミラも拉致される。そしてミラは拷問で殺され、エマも協力させられ、エマは解放されてから自殺未遂をするが駆けつけたマルセルに助けられる。復讐を誓うエマにマルセルは、巨大なものに贖うより、子供たちを逃してやるべきだと諭す。そして、保護してもらっている子供たちをスイスへ逃す計画を進める。

 

マルセル、エマらは、まず少人数を率いてスイスに向かうが、途中、ナチス将校に執拗に追い詰められていく。エマも銃で撃たれ殺されたが、子供たちは無事スイスへ逃すことに成功する。場面は1945年、パットン将軍の場面、紹介されたのはマルセルだった。そしてマルセルは大勢の連合軍兵士の前でパントマイムを披露して映画は終わっていく。

 

非常にいい映画なのですが、マルセルの周囲の人物の描写がちょっと適当に済まされているのが映画全体の深みを生み出せなかった原因かなと思います。いい映画なのですが、もう一歩足りないのは残念。