くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「冬の小鳥」

冬の小鳥

1975年の韓国を舞台に、父親に児童養護施設に預けられた一人の少女ジニのもの悲しくも、運命を受け入れて新たな旅立ちをしていくまでを散文詩のような映像とストーリー展開で描いていく話題作を見てきました。

黒バックのタイトルが終わるとひとりの少女がおめかしをしてこれから父親につれられて出かける様子が描かれます。新品の靴、めかした服、あどけなく笑う少女の姿がほほえましいのですが、ほとんど言葉を発せずに彼女を連れていく父親の姿に一抹の寂しさともの悲しさが漂います。
途中で大きなケーキを買い、バスに揺られて郊外の建物についた少女ジニ、出迎えたのは修道女たちと身よりのない様子の少女たち。そして、別れの言葉もなく父親は去っていきます。突然の出来事に、ただ、父親が迎えにくるのだけを信じてかたくなな態度をとるジニの姿が余りにも痛ましい。

そこで少し年上の少女スッキと出会い仲良く成ります。ここではいろいろな家庭から養子を求めてくる人たちに子供たちを旅立たせることが多く、ジニが入ってまもなく一人の少女が養子となってこの施設をでていきます。
ジニが仲良くなったスッキはいずれアメリカの養父に引き取られることを夢見て、英語や読書など自分を磨くことに余念がないいわば聡明な女の子。ジニとお互いに身の上話をするようになりしだいに絆が深まっていきます。

ある日、瀕死の小鳥を見つけ二人で世話をするようになりますが、まもなくその鳥も死んでしまいます。
やがて、スッキに養子の話が持ち上がり、意気揚々とした彼女はジニに一緒にいこうと誘います。彼女と一緒ならここをでてもいいと思ったジニですが、結局もらわれていったのはスッキだけでした。

ふたたび一人になったジニは自暴自棄になり、友達の人形を壊したり、鳥を埋めたところを掘り返して自分を埋めようとしたりしますが、やり場のない孤独感はいやされません。
そんなある日、ジニにも養子の申し出がきます。父親とも連絡がつかなくなり、自分は一人になったという運命を受け入れることにしたジニは飛行機でフランスへ、そして養父の出迎えを受けるところで映画は終わります。

果たしてジニはなぜ父親に養護施設に預けられたのか、経済的な理由か、新しい母親との人間関係かは明らかにしませんが、一人の少女が、父親の愛情から見放され、何ともいえない孤独の中に放り込まれてもがきながらやがてその運命を受け入れていく姿のけなげさは直接心を打つものがあります。
韓国映画らしい、うすら寂しい殺伐とした景色を背景に少女たちが自らの運命を自分で切り開こうとするたくましさを描いたこの映画は、その意味で一筋の光が見えてくる秀作でした。