くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「わたしのお医者さま」

わたしのお医者さま

ブリジッド・バルドー生誕祭の一本で本日見てきました。なんと共演はあの「ベニスに死す」のダーク・ボガードなのですが、「ベニスに死す」のイメージとはほど遠い軽いムードの診療助手という役柄、しかも回りが大きいせいか非常に小柄にみえて貫禄も何もない。確かに二枚目ですが、目の覚めるというわけでもない。

映画は本当に古き良き時代のお気楽な娯楽映画で、芸術性とか作品の完成度などほど遠いある意味退屈なコメディ映画である。しかし、こういう映画が所狭しと上映され、それがただダーク・ボガードやブリジッド・バルドーというスターで人を呼んで夢を与えていたという当時のムードを感じさせてもらえるだけでも見た値打ちがあったというものだと思う。

物語は単純、診療助手の主人公サイモン(ダーク・ボガード)が勤め先の医師の娘と結婚させられるのがいやで、船上医師として貨物船に赴任する。男ばかりの船の中で、次第に医師として船員として認められていく中、とある港に立ち寄ったところで一人の歌手ヘレン(ブリジッド・バルドー)と出会う。
次に港まで一緒に乗っていくことになった彼女と次第に親密になり、最後はハッピーエンドで映画が終わる。

船の中で繰り広げられる船員たちとのコミカルなからみや、ヘレンが初登場のシーンで聞かせる歌声の美しさがこの映画の見所であるが、いかんせん、単純そのもののエピソードが次々とハイテンポに展開していき、なんの脈絡も意味合いもない。まさに娯楽を楽しむだけ、好きな俳優を眺めるだけの映画である。しかし、今の妙に技巧じみた映像とは裏腹に薄っぺらいながらも手作りのようなおもしろみがある作品であり、すでに60年近く前、映画は娯楽の王様だったことが伺える映画としての貫禄が備わった作品でした。

いや、そんな屁理屈はどうでもよろしい。楽しみましょうひとときの夢の世界へ。