ベルリン映画祭新人監督賞受賞、ジャー・ジャンクー監督のデビュー作ということで、ちょっと期待して見に行ったのであるが、なんのことはない、退屈な映画だった。カメラを据えたままで延々と長回しをする撮影、演技者任せの演出は一昔前なら斬新であるが、今となっては手抜きにしか見えない。時に手持ちカメラでドキュメントタッチで主人公を追いかけるが、全体にリズム感を生み出すに至らず、町中の騒音を誇張して流すという演出もリアリティの追求かもしれないが効果が薄い。
物語は単純で、とある田舎町、スリを働いて毎日を送る主人公ワン、ある日カラオケで知り合ったホステスを恋いこがれるも、結局彼女はいずれかに引っ越してしまう。消沈したワンはとある店で盗みに入って捕まり、そのまま警察へ。往来に手錠でつながれ、人々の冷たい視線を浴びるところで映画が終わる。
田舎町故か、こんなこそ泥が捕まっただけでテレビで報道していたり、薄汚れた大衆浴場や寂れていく町の様子などを描写するも、今一つ情感はわかない。主人公のワンもその町のチンピラという出で立ちでいながらダサいでっかいサングラスをして、安物のスーツを身にまとっている。うらぶれた中国の姿なのか、都会を離れると、まだまだこういう情景がみられるのか、先日の「北京の自転車」と比べると妙に真実味もあるから不思議である。
結局、だらだらと表現される映像に辟易してしまう一本で、どこをどう評価して新人監督賞を与えるに至ったか全くわからない映画でした。