くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「クリスマス・ストーリー」「好奇心」

クリスマス・ストーリー

「クリスマス・ストーリー」
珠玉の名編というふれこみであったので、かなり期待もしていたのですが、体調が悪かったのもあったかもしれませんがいかんせん、眠くてたいへんでした。

物語が平坦である上に、これといって映像にリズムもないように見えるのでよけいに引き込まれてこないのです。もちろん、冒頭の影絵のシーンから、時折見せるアイワイプのようなショットによる変化、さらに登場人物を乱し入りで紹介しながら語っていくシーンの繰り返しも納得するのですが、どうも、一本の作品の中でそれぞれのシーンやショットがリズムを生み出してこない。結果、平坦な物語のみが淡々と語られることになったために、私にとって退屈という感覚で受け入れてしまったようです。

物語は単純。母親ジュノンカトリーヌ・ドヌーヴ)が白血病になったためそのドナーとなるべく散り散りだった兄弟、家族がクリスマスにあわせるように集まってくる。そして、それぞれの兄弟たちのそれぞれの人生、確執が過去と現代を交差させながら語られ、次第に母を助けるという気持ちの中でそれとなく心が再び結ばれていくというものである。

映画が始まると影絵によってこの主人公たちの家族が生まれるいきさつがつづられる。
長男ジョセフに白血病が発病、そのドナーのためにもうけられた次男アンリ、しかし、彼の骨髄は適合せず長男は白血病で亡くなってしまう。それ以来アンリは役立たずの烙印を押される。
そんな中、三男イヴァンの誕生などで、ジョセフの悲劇も次第に忘れられ、そして・・と始まる導入部はなかなかのものである。

そして現代、突然貧血で倒れたドヌーブは病院で白血病であると聞かされる。最初は軽くみていたものの、ドナーを早急に見つけなければならないということになり、子供や孫たちの骨髄検査が行われる。しかし、家族の誰もが適合しない。そんなところへ疎まれていたアンリが帰ってくる。そして骨髄を調べたところ彼だけが適合することが判明する。

次男アンリと姉エリザベートの確執、精神的に問題のある孫などが入り乱れ、それでも気のいい夫の元で次第にジュノンへの思いの中で気持ちがまとまっていく。

ラストシーンはアンリからの骨髄提供を受けるジュノン、その病室へ出向いてふたりきりになるアンリとジュノンの何とも言えない笑顔で映画は終わる。淡々とした家族のドラマであるが、ちりばめられた映像表現の数々が珠玉の名編と呼ばしめることになったのだろう。こうして思い起こしてみるとなかなかの名編であったと思えなくもないのですが、やはり2時間半はしんどかったです。


「好奇心」
ご存じ、ルイ・マル監督の代表作の一本。
フランス映画らしいストーリー展開、初々しいほどの少年少女たちの姿を描くみずみずしい演出、美しく若々しい母親の魅力、そんな彼女を羨望と嫉妬、いたたまれない恋心で見つめる主人公ローランの思春期の微妙な姿がチャーリー・パーカーのジャズの音楽を背景に、モダンにおしゃれにつづられていく物語はまさにルイ・マルである。

ガラスのように壊れやすい思春期の少年の心、時に大人ぶって背伸びした発言や生意気を言っては小憎たらしい行動を見せるものの、淡い性へのあこがれ、大人の女性への興味がまるで陽炎のようにゆらゆらと心の中で漂っている。

そんな主人公は、あまりにも魅力的な母親が自慢でもあり、恋人としての視線を拭えない部分もある。父親が大嫌いなためによけいにその気持ちが増幅し、病院で心臓に雑音があるといわれ療養のため二人きりで出かけたところでも母親がほかの男性と近づくたびに何ともいえない嫉妬心が頭をもたげてきてどうにもならない。

そしてある日母親は夫以外の男性と二日間出かけてしまう。飲めない酒に酔い、行き場のない寂しさにさいなまれるローランのところへ、その男とうまく行かず失意の中戻ってきた母をみて思わず抱きしめ、そして、交わってしまう(と想像されるのですが)

そして、母によって童貞を失った主人公はその夜、一人の女友達と一夜を過ごす。

朝帰りで部屋に戻った彼を待っていたのは父親と兄たち、そして母。家族がローランを暖かく見つめそして明るく笑う。息子の成長を喜ぶかのように。背後にジャズの調べが高らかに流れてFINの文字となる。

画面のところどころに配置される巨大な花瓶、そして空間を広げるかのように多用される鏡、甘酸っぱささえ漂ってきそうな少年、少女たちの仕草がスクリーンいっぱいに繰り広げる思春期の微妙な物語はこれこそ青春と言わんばかりのみずみずしさが漂ってきます。

物語は単純ですが、繊細な演出で描かれる物語はまるで透き通るようなガラスの一遍をのぞきみたような感覚にとらわれました。好みはともかく、いい映画でした。