くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ネイキッド・ソルジャー 亜州大捜査線」「遭難者」「女っ

ネイキッドソルジャー

「ネイキッド・ソルジャー 亜州大捜査線」
香港映画の真骨頂を久しぶりにみた感じ。とにかく、あれよあれよとおもしろいの一言につきるのです。

スピーディなストーリー展開、恋があり、親子愛があり、アクションがあるという、これでもかというてんこ盛りの見せ場の連続。決して、芸術性という面倒なものは何にもないけれど、ひたすら楽しませてくれる。しかも、しっかりとストーリー構成も出来ているし、人物も絶対に混乱しないように脚本が書かれているから、もうこれは職人芸の世界です。

物語は1980年。麻薬捜査官のロンが、大量の麻薬取引の現場を取り押さえるところから始まる。しかし、アメリカロサンゼルスでの自宅で団らんをしているときに、麻薬取引をつぶされて恨んだマダム・ローズが、自ら養成した女殺し家軍団が襲ってくる。そして家族を皆殺しにされ、10歳の娘を拉致される。何とか生き残ったロンは、行方不明の娘を捜し始める。

そして15年後へ時間が流れる。さらわれた娘はマダム・ローズによって過去の記憶を消され、殺人マシーンとなっている。そして、仕事の依頼が各メンバーに与えられるが、まるで「スパイ大作戦」の如し通信方法なのがまた楽しい。

そして三人の殺し家が、ラスベガス、日本、台湾で仕事をする様が実に爽快なくらいエンターテインメントなのだ。そして、台湾で仕事をしたメイシーこそが、ロンの娘だった。しかも、情に厚いメイシーは、ターゲットを倒した後、顔を見られた親子を見逃すのだ。

ロン警部はインターポールに招かれ、マダム・ローズ率いる暗殺者集団と、麻薬シンジゲート撲滅のアドバイザーとして就任。さらに、養女にした娘も男勝りで、ロンに習った拳法でやたら強いというお膳立てまでできている。

メイシーが殺した男は麻薬シンジゲート団の大ボスが上にいて、彼らからもマダム・ローズを含めねらわれるようになり、三つ巴戦になって、派手なアクションシーンへとなだれ込むクライマックスは、とにかく、あれよあれよと楽しい。

さらに、ロンと一緒に組んでいるインターポールのイケメン、サムがメイシーに恋心を抱く。さらに、ロンを殺すために派遣されたメイシーに記憶が戻り、父親がロンであると知る。

そして迎えるクライマックスは、ひたすらアクションシーンの連続。でてくる敵も、多彩な出で立ちで次々と現れ、そのおもしろさは、他国のアクションなど及ばない徹底した娯楽性に満ちている。さらにアクションの演出のうまさも、さすがにコリー・ユンのアクション指導が見事。

ラストは、当然、悪は滅んで、涙のシーンの後、すべて丸く収まるのだが、もう、満足感いっぱいに映画館をでることができる。これがエンターテインメントである。本当に、時間つぶしで入ったけど、掘り出し物でした。


「遭難者」
この後に併映された「女っ気なし」のプロローグ的な短編映画である。

小さな港町オルトへ、自転車でパリからやってきた青年リュック。朝から三回もパンクをして、うんざりしたところへ地元の青年シルッヴァンが通りかかる。そして、一晩泊まることにしたリュックとシルヴァン、一時の物語である。

リュックの彼女に、シルヴァンが夜中に勝手にメールして迎えにきさせ、一度は怒ったものの、迎えにきた恋人と座るリュックのショットでエンディング。たわいのない作品だが、次の作品と見比べるとその似たニュアンスを感じることができる。



「女っ気なし」
フランスの小さな港町、シルヴァンが経営するアパートに、パリからバカンスで、パトリシアとジュリエットという親子がやってくるところから映画が始まる。

いかにももてそうにないシルヴァン。一夏の物語をまるでフランスヌーヴェルヴァーグのような色合いの映像でつづっていく。

監督は、ギョーム・ブラックという人である。

三人はたわいのない夏休みを過ごすが、そこに劇的な物語はない。やたらテンションの高い母親のパトリシアに辟易する娘のジュリエット。女の扱いに全くなれていないシルヴァンは、ぎこちなくこの母娘に接する。

シルヴァンの友人のジルは、女の扱いになれ、クラブでダンスの後、母親とキスをしたりするが、そんな姿に思わず、シルヴァンはジルを殴りつけ、そんなシルヴァンを見つめるジュリエットは、パリに帰る前夜にシルヴァンと一夜をともにする。

誘いかけるジュリエットの行動に、ドギマギしながら、やがて、体を寄せていくシルヴァンの描写が実に初々しいが、いい年をした奥手の男性のまどろこしさが、なんとも面倒に見えなくもない。

そして、帰途のバスの中でのジュリエットのショットでエンディング。

浜辺で戯れるシーンや、町中、クラブ、ダンスホールなど、往年のヌーヴェルヴァーグ的な映像を楽しめる一本で、さりげないカメラワークの連続が、一瞬の時の流れを切り取った物語をみずみずしく見せてくれます。いい映画でした。