「ピーターラビット」
楽しい、とにかく楽しい、始まってからラストシーンまで突っ走っていくのですが、CGのウサギの愛らしいことと人間の絡みがとにかくたのしい。見終わって本当にハッピーになれる映画でした。監督はウィル・グラッグ。
賑やかな歌声とともに、鳩が空を飛んで歌い踊っているシーンから映画が始まる。このオープニングにまず魅せられる。そこへ飛び込んでくる1匹のウサギ、彼こそがこの物語の主人公ピーターラビットなのです。
イギリス郊外に住む画家のビアのそばの森には動物たちがのどかに暮らしている。中でもピーターラビットとその妹たち、そして従兄弟はいつも一緒になっていたずらをして毎日楽しく暮らしている。今日も、野菜畑を作るマグレガー爺さんの畑に忍び込んでは野菜を盗んで、追っかけっこをしている。ところが、ある日、その爺さんが心臓麻痺で死んでしまう。
マグレガー爺さんの家や庭が自分たちのものになったと大はしゃぎの森の動物たち。ところがロンドンのおもちゃ店ハロッズに彼の従兄弟のトーマスがいた。
仕事に生涯を捧げてきた彼だが社長の親戚に出世を奪われ自暴自棄になりしばらく休暇を取るように言われる。彼は亡くなった叔父のマグレガーの家を売っておもちゃ店を自分で開こうと田舎に帰ってくるが、ビアと出会い、ここで暮らすことを考える。しかし、せっかくの野菜畑を取り戻され、さらにビアも取られると思ったピーターたちはトーマスに宣戦布告する。
物語はピーターたちとトーマスの丁々発止のバトル戦がコミカルに描かれていく。その展開が実にスピーディでリズミカルなのでとにかくたのしいのです。しかし、ちょっとしたやり過ぎからウサギ退治の爆薬が大量に爆発、ピーターの家もビアの家も壊れ、ショックを受けたビアはここを出ていくことにする。トーマスもロンドンに戻るが、そこで復職。
しかし、責任を感じたピーターはビアに出ていかないようにするためトーマスを呼びに行き、実は爆弾のスイッチを押したのは自分だとピーターも白状しあやまる。
こうしてピーターとトーマスも仲良くなリビアと一緒に家を直し始めてハッピーエンド。
CGで作られた動物たちがコミカルに物語に色を添え、突っ走って次々と展開する物語が小気味良くてたのしいし、音楽や歌のセンスもいい。見終わって、楽しかったなぁと思ってしまう素敵な映画でした。
「ダリダ〜あまい囁き〜」
洋楽に疎い私でも次々とヒット曲が流れてくると自然と聞き入ってしまう。それほどポピュラーで有名な歌手だったということですね。人間ドラマの部分はほとんど描けていませんが、流れてくる名曲の数々を聞いているだけでも楽しかった。監督はリサ・アズエロス。
主人公ダリダが自殺を企てるところから始まる。よくあるオープニングから、二年前に遡り、さらに子供時代が描かれていく。
エジプトに生まれたダリダは、幼い頃は自分が醜いと信じていた。ところが1956年に歌手デビューした途端わずか二ヶ月でゴールドディスク賞を獲得、その後も次々とヒット曲を発表していく。一方で恋愛が途切れないほどに次々と恋人が入れ替わりできては消えていく。果たして彼女の心に何が存在するのか、映画はその部分がほとんど描けていないし、周囲の登場人物を丁寧に演出していないので、誰が誰か全くわからない。
にもかかわらず、次々とヒット曲が画面に流れてくると、つい聞き入ってしまう。バラードからディスコサウンドまでとセリフの中にも出てくるように、実に彼女のヒット曲は多彩であるし、どれも聴きやすいリズムを持っています。アラン・ドロンとの共演で有名な「甘い囁き」などに限らず、他の曲も何処かで聞いたことがあるということは、世界中でヒットしたのでしょう。
次々とステージシーンが登場しますが、ほとんどが真正面からのシンメトリーな構図で特に凝った演出も行わず、ただ彼女の曲が画面の全てだと言わんばかりの映像に終始します。
そして大ステージの後、ホテルに戻った彼女は「人生に耐えられない、許して」というメモを残して死んでしまいます。映画はここでそのまま暗転、例によって実在の人物の写真と役者の写真を紹介しながらのエンドクレジットになる。結局、彼女に何が起こっていたのかはわからないし分析もしていない映画で終わります。でも曲の数々を聞くだけで十分だった気がします。