くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「眺めのいい部屋」

眺めのいい部屋

ジェームズ・アイボリー監督が描く散文詩のような美しいラブストーリー。しかもシーンそれぞれがまるで絵画のように美しく、色調を抑えたヨーロッパの景色、特にイギリスでの風景の中で戯れる男性たち、着飾った女性たちがまるで名画から抜け出たような映像を見せてくれます。

イラスト調の絵画のような模様を背景にクレジットが流れると物語はとあるホテルへ。イタリアに旅行にきたルーシーと叔母のシャーロットは案内で通された部屋の窓を開けてがっかり。余りに殺風景な景色が広がっていたからである。

愚痴を言いながら夕食をしていると、気のよさそうなエマソン父子から声をかけらっれる。自分たちには景色はいらないから部屋を変わりましょうという提案。不躾に話しかけてくるこの父子に不快を覚えるシャーロットだったが知り合いの牧師の口利きで部屋を変わることになる。

このエマソン父湖の息子ジョージにいつの間にか引かれるルーシーの視線がカメラで表現される。

こうして知り合いになったこの四人、一人で散歩しているときにトラブルに巻き込まれジョージに助けられたルーシーは、急速に心が傾くのを覚える。そして、ジョージはいきなりルーシーにキスを。

旅行から帰ると神父のヴィレッジが空き家で、間借り人を探しているという。そこへ偶然のなせることか運命かエマソン父子がやってくる。
一方のルーシーはすでにセシルという男性と婚約している。

ルーシーたち家族、セシル、エマソン父子、神父等々が戯れる姿がちりばめられる美しいイギリスの風景の中で展開していく。そこにはなんのトラブルも俗っぽさもないまさに上流階級の人々ののどかな世界である。その様子がまさしく冒頭で書いたとおりシスレーの油絵のように美しい。

時折イラスト調のデザインの字幕が挿入され、揺れ動くルーシーの心、そんな彼女やジョージの行動に戸惑うシャーロットたちの様子が淡々と描かれていく。

やがて、セシルと婚約を破棄し、ジョージへの思いを断つためにギリシャへ旅立とうとするルーシーとシャーロットにエマソンの父がジョージの気持ちを素直に伝える。

ジョージとルーシーはこうして再びイタリアの地へ。最初に知り合ったホテルで食事をしていると部屋の景色が悪いとぼやく女性たちと同席している。ファーストシーンの繰り返しである。

眺めのいい部屋に泊まりジョージとルーシーがキスをするところで映画は終わる。

女性向きの美しいラブストーリーで、全体に平坦な展開ですがとにかく美しい。その純粋な映像美の世界がこの映画の最大の見所でしょう。