くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島」「MAD

ナルニア国物語/第3章:アスラン王と

ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島
原作を読んでいるものにとって、この手のファンタジーほど当たりはずれが不安なものはない。誰しもが原作から夢を膨らませているから、それを具体化した映像で描かれると、ほとんどが失望に近いイメージになるからである。

しかし、今回は違った。素直にスペクタクルシーンにわくわくし、そしてラストシーンに感動し、エピローグでじんと来てしまいました。

監督は前二作のアンドリュー・アダムソンからかわって、数々の作品を今まで監督してきたベテランのマイケル・アプテッドになっています。そのためかどうかはわかりませんが見せ場のポイントが実に良くわかっておられるようで、見せるべきところ、笑わせるべきところ、引き込むべきところなどのツボが見事なタイミングで挿入されている。

出だし、一気に絵の中に引き込んでそのまま有無を言わせずファンタジーの中に放り込む。そして、あれよあれよという間に今回の物語のアドベンチャーに入り込んでしまう。
しちめんどくさい教訓めいたエピソードをほんの簡単にさらりと流して、ひたすらCGを使った壮大なファンタジーアドベンチャーを堪能させてくれます。

さらに、クライマックス、まるで「タイタンの戦い」のごとくの巨大な海蛇の化け物と空飛ぶドラゴンの戦い、さらに、いつでるのかと思っていたらようやく登場するアスラン。さらに、これでもかとバトルシーンを見せた後に、大活躍したねずみのピーチクリフが戦いに疲れ、剣をおいて、アスランの国へ旅立ってしまうラストシーンに思わず胸が熱くなったかと思うと、「まだまだあなた方は必要だ」というアスランのセリフと共に人間の世界へ帰ってくるエドワードたち。

冒頭の海の中に引き込まれるシーンを逆回転させたように下の部屋に戻ってくる演出のリズム感がまことに見事なものです。

原作を読んだのはちょっと前なのでストーリーをほとんど覚えていませんが、今回の作品は映画としてのリズムが絶妙に演出された映像作品として完成されたものだと思います。
全七話の中盤に入ってくるので、これくらいのレベルの作品でないと後半がもたないですから、その点で大成功だと思います。

ただ、字幕版を見るためには3D版しかないために、見たくも無い3D映像を見なければならなかったのはしんどかったですね


「MAD探偵 7人の容疑者」
ジョニー・トー監督のB級映画の一級品と呼ぶのがベストのような、これぞB級映画!という賛辞が爆発する一本でした。

とにかく、つっこみどころが満載なのですが、ニンマリととしながらもぐいぐいと物語に引き込まれ、これでもかというほどに遊び心満点の演出に拍手しながら、ちょっとミステリーのおもしろさをまじめに堪能するというなんとも愛してやまない作品でした。

始まると、ずらりと並んだ刃物のショット、そこへ一人の刑事ホーが西九龍署に赴任してくる。折しもそこではバン刑事がつるされた豚にナイフを突き立てている。
バン刑事に紹介されたホー刑事はバン刑事にトランクに自分を詰めて階段から落とせと命じられる。そのとおりバン刑事を階段から落とし、出てきたバン刑事は「真犯人はアイスクリーム屋だ」と犯人を言い当ててしまう。

思わず「なんでわかるねん!」
とつっこんだとたん、バン刑事の上司が退職、その上司にバン刑事は自らの耳を切って与える。そしてタイトル。

うれしくてうれしくて、もっともっとと催促してしまうほどわくわくした導入部です。

人の心の内面をみることができるバン刑事は、一人の人間をみても、その本音を語る別の人間も同時に見てしまう。その奇行で、警察を辞め、今は一人暮らし。ところがそんなバン刑事にホー刑事がある事件の捜査を依頼してくる。バン刑事はそこにいるはずのない元妻に語りかけたりする。画面に映ったりいなくなったりする妻のショットがニンマリするほどにドキドキさせてくれます。

依頼された事件の関係者であるコウ刑事を見るバン刑事には7人の人格を発見する。そのそれぞれが次々と話しかけてくるショット、男子トイレで女性の格好で小便をするショットなど、どこまでが遊びかと思わせるほどに笑いが絶えない。

コメディのごとく思えるようなシーンもあるものの、それがシリアスなミステリードラマ仕立てなので、あれよあれよと映っては消え。消えては映るさまざまな人物を見つめるバン刑事の視線のおもしろさ。さらに、自らを生き埋めにして真相を見つけだすというなんとも理屈もなにもない展開の楽しさ。

そしてラストはおきまりのごとく、割れた鏡にバン刑事、コウ刑事、ホー刑事が三つどもえとなって、ホー刑事が一人生き残る。かつて昇進にさわると思って犯罪を犯してしまったコウ刑事と同じようにホー刑事が行動するラストシーンが何とも心憎いほどサービス満点である。

謎解きのおもしろさ、映像テクニックの楽しさ、ミステリアスな中にどこかモダンホラー映画のようなストーリー展開の楽しさ。こんなてんこ盛りの娯楽映画そうそうおめにかかれません。
もちろん、深夜放送でお目見えするような作品かもしれませんが、出会ったことをラッキーに思えるような作品だったと思います。