M・ナイト・シャマラン監督がプロデュースしたサスペンスホラーシリーズの第一作。評判もいいし、ヒットしているので期待で見に行った。そして、予想通り期待を裏切らない出来映えの映画でした。
映画が始まると、町並みを真っ逆様に撮ったシーンが続いてタイトルが流れる。つまり、上にビル群が逆さまにそびえ、天に海や川が見えているという構図である。本来、こうしたシーンは手短にして次第にカメラが回転し通常のかたちになるが、この映画ではタイトルバック中このままであった。
そして、タイトルが終わるとカメラはゆっくりととあるビルへ。ロビーを清掃している男の回転モップへ。ところが突然、建物の外の車に一人の人間が落下。それでも平然と掃除をする男。これだけでもドキッとする怖さがある。
画面が変わると、一人の刑事ボーデンが喫茶店で、友人に断酒について説教されている。その後刑事は車の上に落ちた死体の調査へ。
場面が変わるとビルのエレベーターに次々と人が乗っていくが、混むのを嫌った一人が別のエレベーターへ。そこへ駆け込む別の男、老婦人、警備員、若い美女、そしてエレベータは35階を目指すが、突然止まってしまう。ここからが二転三転、張り巡らされた伏線のなかをかけめぐるサスペンスへと進んでいく。
止まったエレベーターの中をカメラでみる二人の警備員。一方、車の上の死体が実は離れたビルの屋上から落ちたものと推測し、調査を進める刑事が、エレベーターの止まったビルの警備室からの要請でそのビルへやってくる。
エレベーターの保守係の行動をとらえ、一方で警備室の警備員の一人が「これは悪魔の仕業だ」と語り始める。
次第に盛り上がってくるサスペンス。
エレベーターの中では突然真っ暗になり、電気がつくと一人、また一人と死んでいく。お互いに疑心暗鬼に陥るエレベーターの乗客。
一方、刑事の妻と息子は5年前にひき逃げされたというエピソードが挿入され、さりげないこの伏線も最後に生きてくる。
エレベーターの乗客は、一人は海兵隊上がりの青年トニー、離婚詐欺を繰り返す美女サラ、泥棒の老婦人ジェーン、詐欺まがいのセールスをするセールスマンビンス、暴力的な行動の警備員ビル、と一癖もふた癖もある人物ばかりとわかる。
殺人が起こり初めて、警備室から呼ばれたボーデンはそこで、次々と的確な指示で解決へと物語を導いていく。
この見事さが、いままでわだかまっていたサスペンスに流れを与え、どんどんスピードを上げてくる脚本は見事である。
これは悪魔の仕業だと語る一人の警備員は、乗客すべてが自らの罪を告白すれば助かるとつぶやくが、だれもあいてにしない。
やがて、乗客はトニー一人になろうとしたところ、実は二人目に死んだ老婦人ジェーンが悪魔であると判明、次第にトニーにせまり最後の命を取ろうとするが、ここでいままで悔いていた彼は告白。なんと、彼はボーデンの妻をひき逃げした犯人だった。
こうして映画は収束を迎える。
エレベーターの乗客を救出すべく必死になる消防隊や、謎を解いていこうとする刑事ボーデン、さらに不気味に迫ってくる見えない悪魔の存在など、張り巡らされたサスペンスが見事に絡み合う展開は息をもつかせないおもしろさである。
結局、トニーは逮捕され、ボーデンの車で護送されるが、最後に「君を許す」と語るボーデンの言葉で締めくくられる。このあたりは、ナイト・シャマランならではの神の存在を最後に肯定するテーマが語られるところはちょっと?となるものの、かなり自然にエンディングを迎えるので、これで良かったと思う。
画面演出については、ビルに到着したボーデンの頭上にガラスの破片が落ちるショットや、35階で不気味に割れたガラスの窓をみて、外があけ放たれたままの恐怖感や、エレベーターの保守員が警備室からの電話をとろうとして落下するくだり、エレベーター内の鏡の効果的なショットや、次々とエレベーター内の乗り込むシーンでのオーバーラップする動きの演出のおもしろさ、等々画面づくりにも一工夫二工夫されていて、上質のホラーミステリーのおもしろさももっている。
悪魔という存在をさりげなく映しながら最後の最後まで決して登場させないもったいぶりをしっかりとしたサスペンスで引っ張っていく展開のおもしろさも特筆すべきものがあります。
神と悪魔の存在を肯定するというナイトシャマランの主張がかなり押さえられたために成功した上質のホラーサスペンスだったと思います。おもしろかったです