くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「三百六十五夜」「二十四の瞳」「銀座カンカン娘」

三百六十五夜

「三百六十五夜
若き日の市川崑監督のいわゆる珍品映画である。
次々と、思いつくままに展開していくストーリーのいい加減さに仕舞には笑いさえでてきてしまう、いかにも即興的な展開が楽しい。

物語は高峯秀子扮する成金の令嬢蘭子が、想いを寄せる男性小六をなんとか振り向かせようとする物語、という始まりなのだが、いかんせん、主演はその小六と恋に落ちる育ちのいい家の一人娘寿子の話なのです。

悪どい商売人で男の知人でもある男津川にだまされて借金を背負ってしまった寿子、津川の店の大阪本店の令嬢でもある蘭子とのやりとりが、次々と事件が起こっては次の展開へ、また次の展開へと、まとまりのないほどにお話が進んでいく。

市川崑らしい個性的な映像は特に目立たないが、雨のなか、通りでたたずむ小六たちのショットやテーブルから落ちるグラスのショットなど、工夫してやろうという市川崑監督の意気込みが空回りとはいえふんだんにでてくる。

結局、冒頭の高峰秀子のアップに始まって、ゴルフをする高峰秀子のアップで終わるという、不思議な映画でした。
本来、東京編、大阪編で150分ほどもある作品ですが、今回は総集編ということで2時間弱になっていました。


二十四の瞳
いわずとしれた木下恵介監督の傑作中の傑作。というより日本映画の至宝と呼べる一本をほぼ30年ぶりくらいに見直した。

この映画を理屈で分析するなどというのは的外れもいいところで、この作品は木下恵介監督の並外れた感性が生み出した映像の世界を素直な感情で感じ取り、感動するべき映画なのだと思いました。

どこがどうという部分を具体的に語れないのに、いつの間にか2時間30分以上の物語の中に引き込まれ、そして、何ともいえない素直な気持ちになって泣いている。これこそ、才能を持ったものだけが作りうる一種の映像芸術なのかもしれません。

確かに、それぞれの画面の構図が実に美しい。どれをとっても絵画のごとく美しい。そして非常に小気味よくそれぞれのエピソードが展開していくことに気が付く。そして叙情的演出が見事に結実した傑作と呼べる完成度をもっていることも納得できる。さりげなく挿入される景色のショットや、スタンダード画面ながら驚くほどに奥の深い構図をとった画面作りなど素晴らしいと思う。しかし、それ以上に事細かな分析ができない。つまり凡人には理解しがたい映像なのである。

そして、直接胸に訴えてくる迫力或るドラマでもあるというのがまさに名作たるゆえんの映画なのだろうと思います。やはり素晴らしいですね。

「銀座カンカン娘」
とにかく楽しい。映画は娯楽ですよというのをそのエッセンスだけを取り出したようなたわいのないコメディである。
音楽映画とも言うべきで、突然ミュージカルのごとく歌い出したりもする。そして、何が何ともスプラッタコメディのごとくドタバタと展開する物語は或る意味心地よいほどに楽しい。

もちろん、題名に使われた「銀座カンカン娘」を笠置シズ子高峰秀子がことあるごとに歌うし、とってつけたような物語ですが、見ていて、当時の人々のたくましささえ感じさせられて気持ちか陽気になってしまう。
クライマックスは武助とお春が結婚することになり、その席で古今亭志ん生が落語を披露するというなんともお宝映像のようなラストが実にほほえましいです。

今となっては忘れてしまった娯楽というものへの熱い思いがしっかりと伝わってきて、劇場をでたとき、思わず気持ちが明るくなっていました。