くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「不屈の男 アンブロークン」「おはん」「獄門島」

kurawan2016-03-10

「不屈の男 アンブロークン」
アンジェリーナ・ジョリーが監督としての第二作で、第二次大戦中日本の捕虜になった元オリンピック選手、ルイ・ザンペリーニの物語である。

とにかく、全体にカメラが実に美しい。日本の国旗の背後に光る夕陽や、大軍で飛んでくる爆撃機の映像、捕虜たちの姿を真上から捉えるカットなど、さりげないシーンのあちこちにアンジェリーナ・ジョリーの感性がうかがえる。その意味で、彼女の才能は認めるべき一本という映画でした。

物語は、日本を爆撃しに行く米軍の編隊のシーンから始まる。何気ないオープニングだが、とっても綺麗である。

中に乗る主人公ルイ、とりあえず攻撃を終え、帰還。その映像の背後に、彼の少年時代、走るという才能を開花させていく姿が描かれる。そしてドイツオリンピックに出場、次の目標を戦争で中止になるのだが、東京に置く。しかし、任務中に不時着し二カ月足らず漂流することになる。その上、日本軍に捕虜として捉えられ、収容所の所長に、執拗に責められることになる。

映画は漂流し、死の淵に立つ場面を前半に、収容所で、執拗な責めにひたすら耐え抜き、生き抜こうとする彼の不屈の姿を描く後半という形になる。正直、ストーリーテリングはややしんどい。しかし、散りばめられるローアングルや美しいカットで、最後まで映画をつないでいく。

ラストは、終戦してアメリカに戻ってエンディング。史実なのだから、これというラストはない。

エピローグで彼のその後を語って映画は終わる。長野オリンピック聖火ランナーを勤めたのだそうで、さすがにこの映画を見るまで知らなかった。

映画としてはそれなりに評価できるクオリティの一本で、アンジェリーナ・ ジョリーは監督としても才能があるのかもしれません。


「おはん」
市川崑監督の作品として見逃している一本。吉永小百合がとにかく輝いている。さらに、全盛期の大原麗子との競演がなんとも艶っぽいムードを生み出す映画でした。残念ながら、フィルムの劣化がそれなりにあり、せっかくの映像美が半減しているのがなんとも口惜しい。

主人公おはんの手招きするアップから映画が始まりました、夫幸吉が外に女おかよを作り出ていくところから物語が幕をあける。

出ていく先は正妻ではなく、芸者の女将である大原麗子扮するおかよ。こうしていわば「夫婦善哉」的なストーリーが展開するが、さすがに市川崑の美学は、さりげないシーンのあちこちに散りばめる艶やかさである。

物語の発端から7年後、おはんと再会するがところからが本編。屋根瓦のショットや、美しい着物の絵など、美学がふんだんに登場。女優二人の色っぽい競演、がなんとも言えない色香をスクリーンから漂わせる。

やはり市川崑はいいですね。ラストはおはんが身を引いて去っていく置き手紙のシーン。これが日本映画の真骨頂かもしれません。

ただ、二時間弱ですが、私は「細雪」の二時間二十分のほうが短く感じました。好みでしょうね。


「獄門島
とにかく、クライマックスがくどい。大俳優を使いすぎた感じで、誰が出る場面もメインシーンにせざるをえなくなった結果、支離滅裂に散漫なストーリー展開になってしまった感じです。監督は市川崑角川映画全盛期の一本ですが見逃していた作品。

オープニングから、いかにも横溝正史と言わんばかりの導入部、そして当時の横溝作品のレギュラーメンバーが次々と登場、そしていきなり殺人事件へ。

あとは、謎解きよりもオールスターの出番を順番にこなす感じで、結局、金田一耕助もこれという活躍もなく、真相が暴かれてエンディング。

できが悪いので有名な一本ですが、これも市川崑作品なのです。