くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「朝の波紋」

朝の波紋

高峰秀子が英語を堪能にしゃべる商社のキャリアウーマンを演じたラブコメディ。監督は五所平之助監督である。

物語はたわいのないもので、取引のトラブルやら、間借りしている家の同居人の少年の犬の話やら、さらにはライバル商社の営業マンと親しくなるわ、同僚の男性と恋の話が盛り上がるやら、なんとも取り留めのない物語である。どこに向かっているのかわからない雰囲気で展開していくのですが、所々に高峰扮する女性が、浮浪者や貧しい人々が作る飾り物、さらには孤児たちが暮らす院などを見て心を痛める下りがあるところから、仕事一筋に生きてきた自分の人生のどこか空虚な部分を見つめていくという人間成長のドラマでもあるようでした。

高峰秀子は半年のフランス生活から戻ってきての復帰第一作。しゃべる英語は実に流ちょうで(吹き替えではないと思います)、単なる演技力のある女優とは一歩も二歩もレベルの高い名女優であったことの片鱗を伺わせるものでした。

共演は大根役者で有名だった池辺良などですが、それよりもまだ敗戦の傷跡が生々しい景色がふんだんに取り入れられ、当時の風俗が実にリアルに見ることができただけでも一見の価値のある作品だったと思います。