以前見たときはちょっと条件が悪くて見づらかったので今回改めて見ることができたのはラッキーでした。
ロバート・アルトマン監督ならではの風刺コメディ炸裂の傑作であることを再認識してしまいました。
冒頭、さりげなくフレームインするヘリコプター、背後に流れるジョニー・マンデルの「M・A・S・H」のメインテーマで「自殺は気分を変えるだけ・・」なんていうある意味かなりブラックな感覚の曲が流れる。しかもそのメロディが実に美しいので、これから始まる物語を笑い飛ばしているかのように思えてしまう。
いまさらですが、物語は朝鮮戦争の時代、野戦病院M・A・S・Hでの日常を舞台に次々と引き起こされるおバカな物語がエネルギッシュな演出で次々と語られていきます。
突然やってくるホークアイ(ドナルド・サザーランド)、デューク(トム・スケリット)、トラッパー(エリオット・グールド)は実はなかなかの腕の外科医、この三人を中心の騒動が起こされていきます。
聖書を愛読し、宗教人のごとく清廉潔白そのものの行動をするバーンズ少佐(ロバート・デュバル)、そこへやってくるこれまた堅物の軍人そのままの女性士官ホーリハン少佐(サリー・ケラーマン)、この二人の化けの皮をはがすべくホークアイたちがベッドでの声をスピーカーで流し、怒り狂ったバーンズはそのまま危険人物として送還に。一方のホーリハンは次々と嫌がらせを受けるうちにとうとう吹っ切れてしまう。
さらには、自らホモであると告白するワルドウスキー大尉、しかしその潜在的なホモ意識を最後の晩餐よろしく皆で取り囲んで励まし、眠りにつかせて女性をあてがうなどの悪ふざけシーンも実に巧妙な映像で展開するから笑いよりも苦笑い的に楽しめてしまうから細工なのです。
どたばた劇が中心ですが、そこかしこに見られるロバート・アルトマンならではの反戦思想がまさに当時の世界の空気を見事にスクリーンに映し出されていきます。
後半の見せ場であるフットボールの試合シーンの躍動感あふれる映像は必見。
アルトマン流のさめたブラックユーモアがちりばめられ、見ているだけで彼の作品の空気が漂ってくるのがロバート・アルトマンの映画なのです。その中で、映像のリズムといい、音楽との見事なマッチングといい、登場人物の魅力あふれるキャラクターといい、そのどれもがベストコラボを果たしている傑作だと思います。後は好みの問題ですね。
やはり午前10時の映画祭で上映される作品にはずれはありませんね。