くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「トゥ・ザ・ワンダー」「ローン・レンジャー」

トゥ・ザ・ワンダー

トゥ・ザ・ワンダー
流麗なカメラワークと、目の覚めるような映像美で見せるテレンス・マリックの映像詩である。お世辞にもおもしろかったとはいえない作品ではあるが、美しい構図と画面の数々に魅せられてしまうのだから、さすがにすごいと思う。

主人公のマリーナとニールがフランスのモンサンミッシェルにいるところから映画が始まる。次第に潮が満ちてきて道が消えていく様が、徐々に覆ってくる水の流れをゆっくりととらえていく映像にまず驚かされる。しかも、みるみる沈んでいく陸地の上でマリーナとニールが戯れるのであるから、ある意味幻想的でもある。

列車の中でのいちゃつく場面、マリーナの娘タチアナを交えてのスーパーでの買い物のシーンなど、たわいのない映像さえも、手持ちカメラと移動撮影を駆使した映像でまるで流れるようなリズム感が生まれてくる。

画面の隅や地平線などで遮る太陽のきらきら光る画面。たくさんの馬やバッファローが群れる中での計算された構図と配置による映像など、ため息がでるほどに美しい。

やがて、マリーナ等はアメリカへ渡る。広々した住宅街で、垣根もなにもない点在する家の配置が非常に広大に見える画面を形作る。ニールは環境保護の調査官のような仕事をしているようである。マリーナは前夫と離婚していないためにニールと結婚できない。無邪気なタチアナが、フランスへ帰りたいと言いだし、クインターナ神父に相談。やがて、ビザがきれたマリーナはフランスへ帰る。

ナレーションで登場人物の心境が語れていくのが中心で、映像のみで物語を伝えている感もあり、これは芸術作品だなと何度も納得させられていく。

マリーナが去った後、ニールは幼なじみのジェーンと親しくなったり、刑務所を回るクインターナ神父の苦悩などが語られる。ニールもマリーナへの愛を深く考え直し、タチアナがいなくなり孤独になったマリーナを再度アメリカに呼ぶ。そして、結婚するのだが、マリーナのニールへの愛情は徐々に高まり、受け止めきれないニールの態度に、出来心で若者とベッドにはいるマリーナ。そんなマリーナを受け入れられず非難するニール。一方神の存在に疑問を持つクインターナ神父も新しい赴任先を提示され、今の地を離れる決心をする。

マリーナもまた再びフランスに戻り、モンサンミッシェルに通ずる干潟にたたずむショットでエンディング。

全体が映像詩であり、会話が繰り返される場面は数えるほどしかない。ほとんどがナレーションによる解説に終始する映像は、さすがにしんどい。しかし、カメラワークの美しさと、他に類をみないほどに美しい芸術的な映像美は一級品であり、それを楽しむだけでもみるだけの値打ちが十分にある作品だと思う。


ローン・レンジャー
アメリカではオオコケしたらしいけれども、単純にとってもおもしろい娯楽映画に仕上がっていた。二時間半ほどあるにも関わらず、ほとんど退屈する暇がない。もちろん、映画のレベル云々をいうと、それほどではないにいても、素直に楽しめるのです。

1933年、一昔前の遊園地のシーンから幕を開ける。一人のローン・レンジャーの格好をした少年が、懐かしい西部開拓時代の世界を見せるジオラマの小屋にはいると、年老いた格好の先住民の人形がある。トントの年老いた姿の人形が少年に語りかけるローン・レンジャーの物語という展開で本編が始まる。

時は19世紀の末、兄が住む西部の町に汽車で帰る主人公ジョン。途中でならず者たちに襲われ、とらわれの身で護送中だったブッチとトントに出会う。

テキサスレンジャーで勇敢な兄ダンがブッチに殺され、瀕死になったジョンもトントに救われ、子供の頃の復讐に燃えるトントと兄の敵と正義のために立ち上がるジョンがコンビを組んで、いつものようにコミカルな展開を交えながらの冒険活劇が始まる。

なんといっても、クライマックスの汽車二両による併走するアクションシーンが絶品で、あれよあれよとスリル満点のアクションに息をのむ。このシーンがかなり長いが、飽きさせることなく次々と見せ場とハラハラドキドキに時を忘れてしまう楽しさである。

ラストは「戦場に架ける橋」を思わせる鉄橋から落下する汽車のシーンで大団円。さらに自らローン・レンジャーとなりトントとともに正義を貫こうとする二人のショットでエンディング。

とお話を語り終わった見せ物小屋のトントは服を着替えて、荒野の中に歩いて消えていってエンドクレジットがかぶる。

「パイレーツ・オビ・カリビアン」でもそうでしたが、ゴア・ヴァービンスキー監督のアクション演出のスタイルはとにかくどたばたと次々に見せ場をつないでいく。時間を忘れさせるほどに展開するアクションが見物で、そこにジョニー・デップの個性あふれる動きが色を添えるという者で、今回もとにかくエンターテインメントとしては十分に楽しめる。スピルバーグとは違って、個性あふれる演出こそないもののおもしろさという点では合格点の映画です。

アメリカでこけた原因は、いまどき先住民を殺していく白人の物語自体が受け入れられないのかもしれませんね。そういうこだわりのない日本人には楽しいところしか見えないのでしょう。