くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アジャストメント」「レッド・バロン」

アジャストメント

「アジャストメント」
フィリップ・K・ディック原作短編による物語であるが、いかんせんスケールの小さい作品で、短編小説そのもののたわいのない物語でした。なにが足りないのかというと、やはりアイデアのおもしろさを映像にするときにスケールを持たせていないためでしょうね。

結局、主人公デヴィッドはエリースと結婚することがゴールインになっているだけで、そのひたむきさでアジャストメントビューローという組織の議長というか運命を握るトップが心を動かされて、すべてを書き換えるというのもなんともたわいのないラストではあります。

ドアを通り抜けるおもしろさをもっとサスペンスフルに使うべきであるのにその緊迫感は全然ないし、せっかくの議長らがいる建物の複雑な構造にもカメラによるおもしろい演出も施されていない。結果としてただの空洞にしか見えないのは実に残念。

マット・ディモン扮するデヴィッドが末は大統領になる運命を担っているというのに、そちらのことはほとんどふれずに、ひたすら出会った女性エリースを追いかけるだけの物語にしている。それならそれで描きようがあると思うのだが、下手に議員としての人気のある姿を冒頭で積極的に描いたためにどっちつかずになったのだろう。

思い切った脚本で主題をどこにおいていくかを決めるべきだった。それに、この手のどこかシュールなそして寓話的な物語ならもう少し映像も凝るべきではないかと思う。
ストーリーにリズムがない。何とも表現しにくい作品でした。

レッド・バロン
第一次大戦中、ドイツ空軍に属し、次々と敵機を撃墜し撃墜王レッド・バロンと呼ばれた英雄の物語である。いわゆる伝記映画なので淡々と進む物語を素直に楽しめればそれでよい作品なのです。

しかし、色とりどりの複葉機が大空を舞う空中戦のシーンが実に美しくて、まるでオンラインゲームを見ているかのように引き込まれてしまいました。おそらくCGなのでしょうが本当に映像面のテクニカルな技術は進んだものですね。

映画が始まると少年時代の主人公リヒトフォーフェンが鉄砲でしかをねらっている姿に始まります。そこへ飛んでくるドイツの複葉機。それを見上げてタイトルが始まる。

第一次大戦はまだまだ騎士道が生きていた戦争で、このリヒトフォーフェンも敵の埋葬の場に飛行機で空中から花を落としたり、打ち落とした敵機の乗組員を丁重に助けたりする場面が至る所にでてくる。もちろん、リヒトフォーフェン本人も貴族出身である意味恵まれた家柄であることの甘さもないわけではなかったのかもしれません。

そして一人の看護婦と出会い、恋に落ち、一方で戦況が厳しくなるにつれて戦争の醜さを目の当たりにし始める。次々と攻撃してくるフランス空軍と空中戦を繰り返しながら、自らの死を少しずつ感じ始める下りが何とも切ない。

クライマックスの西部戦線での総攻撃のシーンは圧巻で、空に浮かぶ飛行船をかいくぐって敵機と空中戦をするシーンは見応え十分。ある意味美しすぎるきらいさえもあります。

ラスト、最前線に敵機が近づいているという連絡に出撃をしますが、その顔にはこれが最後であるかというような表情が浮かぶ。そのアップで映画は終わり、実在の人物たちのその後のテロップが流れてエンドタイトルになる。

突然の上映で海のものとも山のものともわからない作品でしたが、それなりに映画として楽しめる作品だったと思います。