くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「東京公園」「人肌孔雀」

東京公園

「東京公園」
何とも抑揚のないストーリー展開、さらに、それぞれのキャラクターの性格付けがまるでドングリの背比べのように凹凸がない。そしてその凹凸がでそうになると別のキャラクターが押さえていく。その繰り返しで、それぞれの登場人物さえもがとりとめもなく目立ちそうで目立たない。しかし、そんな没個性的な物語と登場人物が醸し出すドラマが妙に作品として個性を生み出してくる。そんな映画がこの作品でした。監督は青山真治、原作もある物語なので、脚本にする段階では失敗ではなく、意図的なものにしたのだろう。

主人公はカメラマンを目指す光司(三浦春馬)。姉の美咲(小西真奈美)とは血のつながりのない兄弟である。そして、最初はわからなかったが、光司の部屋で絡んでくる弟であるヒロはどうやら幽霊であるらしく、ヒロの元カノが富永(榮倉奈々)である。

ある日、光司は公園で家族写真を撮っているときに一人の歯科医初島に声をかけられ、一組の親子が公園にやってくるので追跡して写真を撮り送ってほしいと依頼される。

この物語を中心に、密かに光司に思いを寄せる美咲、そんなことを伝える富永、そしてやたらゾンビ映画を好む富永のコミカルなキャラクター、ヒロの存在、などなどがどの人にスポットをあげるでもなく語られていく。とに買う、ストーリーもそれほど劇的な事件も起こらないし、結局それぞれの男女のそれぞれの物語がそれぞれにうまくまとまっていくという、なんともたわいないラストシーンにつながる一本なのだ。

広い公園でのショットを中心に、微妙なスパイスでストーリーを牽引する榮倉奈々扮する富永の存在だけが妙に魅力的だが、肝心の光司の存在感がちょっとなさすぎる。
さらに、小西真奈美扮する美咲の微妙な女心も物足りないし、いつまでも成仏できずふらりふらりと光司の周りに出没するヒロの描き方も今一つさみしい。

でも、そんなそれぞれの物足りなさがこの映画の個性でると思うし、これはこれでこういう映画もあるものだと楽しめる一本だった気がする。不思議な映画でした。

「人肌孔雀」
とにかくおもしろい娯楽時代劇、そんな言葉がぴったりの痛快映画でした。
山本富士子が三役を演じるというのが最大の見所、芸者、町娘、そして男っぷりの良い若侍と華麗に変身しながら、7年前の父の敵を討つために様々な人たちの助けを借りて悪人を罠にかけていく様は全く痛快そのもの。

そしてそんな企てをする娘志乃に周りの人たちがさりげなく力を貸していく様がこれもまた爽快なのです。

悪人たちがまんまとはめられ、疑ったところ又逆にはめられていくという小気味良さもこの映画の見所で、もちろん、華麗な女剣士として立ち回る山本富士子のチャンバラシーンもあってとにかく全編見所満載なのです。

市川雷蔵はどちらかというとわき役的なイメージですが、クライマックスで颯爽と登場して物語にとどめを刺すという最高の役柄を担っているのはさすが大スターの貫禄。

物語の所々に山本富士子が歌う挿入歌が華麗にストーリーに色合いをもたらし、華やかなりし時代劇全盛期の絢爛たる娯楽映画らしいおもしろさを満喫させてくれるあたり、必見の一本でした。

ただ、いかんせんフィルム状態が悪く、全体に夜間のシーンが多いこともあるのですが昼間のシーンもすでに薄暗くなるほどに焼き付けが厳しくなっているし、ほんのワンシーン、フィルムが粘着してしまったのか完全につぶれているところも見られたのが残念。これほどおもしろい傑作エンターテインメントなのに、大事にしてほしかったですね。

でも、おもしろかった。