くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「光のほうへ」「男たちの挽歌」

光のほうへ

「光のほうへ」
デンマークの寒々とした景色を背景にアル中の母と暮らす二人の兄弟、彼らにはまだ生まれたばかりの赤ん坊の弟がいるが、母は全く面倒を見ず名前さえ無い。この赤ん坊に二人の兄弟はミルクをあげたりしてかわいがっている。

兄ニックと弟(最後まで名前が明かされない)二人はある日赤ん坊にある名前を与えることにし、電話帳から適当に選んだ名前を与える。
ところが、そんなある日、不注意から赤ん坊を死なせてしまう。号涙するニック。そして暗転。

十数年がたつ。
アルコールにおぼれ、切れやすい性格で荒れた毎日を過ごす兄ニックの姿から本編が始まる。彼はシェルターと呼ばれる安アパートに住み、かつてアナという恋人もいたが今は別れている。そのアナの兄イヴァンと今もつきあいがありよき友人でもある。
隣にはソフィアというセックスフレンドのような女性もいるが、どこか寂れた毎日である。
二年前に母を亡くし、そのときに弟と出会ったきりである。何とか弟に会いたいとアパートを訪ねるが、二週間前から行方がしれないと隣家の婦人に聞く。

ある日、イヴァンにソフィアを世話してやるが、精神的に問題のあるイヴァンはソフィアを絞殺してしまう。途方に暮れるニックは自らその罪をかぶろうとし警察に捕まる。

時はさかのぼり、今度は弟の物語となる。結婚はしたものの妻を亡くし、麻薬中毒の日々の中で必死で一人息子を育てている。
そんなある日、母の死を知らされ、葬儀の場でニックから母の残した遺産をすべて受けることになる。

その資金を元に麻薬を仕入れ、その売人として日々を送るようになる弟。しかし、警察に通報され、突然逮捕される。

そして兄と弟は偶然、刑務所の金網を挟んで対面することになるクライマックスは何とも心憎いほどに切ないです。そして、息子とも離され絶望した弟は兄と会った後で自殺してしまう。その葬儀の場でニックは弟の息子と出会い、名前の由来を語る。かつて、死んでしまった自分たちの弟の赤ん坊に与えた名前を与えていたことを語り名はマーティンと告げる。そして二人で暮らすことにして映画は終わる。

これを一抹の希望と見るかどうかは何ともいえないが、丁寧に紡いでいく画面づくりの緻密さが非常に秀でた作品で、内容の充実度、兄弟の心の引き離されない絆の固さ、麻薬やアルコールにおぼれながらも人間らしさを必死で残して生きる兄弟の姿が切々と伝わってきて、エンディングの後は熱い感動が胸に残りました。

全体に暗い話ですが、不思議と光がさっと射しているような不思議な感覚を伴う一品でした。

男たちの挽歌」(ジョン・ウー版)
念願のジョン・ウー監督の出世作をようやくスクリーンで見ることができました。
出だしから冒頭部は、これが傑作と噂される作品かとちょっと疑問符が現れましたが、その後、次第に物語に引き込まれていきます。

次々と繰り出されるガンアクションがこれでもかとストーリーを牽引していくのがこの作品の魅力でしょうか。そしてホー、マイク(チョウ・ユンファ)、キット(レスリー・チャン)のそれぞれの男の生き方、そして血のつながった兄弟愛と義理でつながった兄弟愛の男と男の心の絆がこれでもかとストーリーに深みを与えていく様はさすがに評価されるだけのことはあると思います。

ただ、映画の出来映えとして、いや完成度の高さではやはり香港娯楽映画であって、特に気負ったりせずにエンターテインメントをつっぱしているという出来映えで、かなり荒削りな作品であることは確かです。

ただ、そんなひたむきな作風とガンアクションがとにかくぐいぐいとラストシーンまでつないでいき、そしてまるで西部劇のごとくヒーローとしてのマイクやホーの姿が拍手ものです。

物語は先日見た韓国版と同様、偽札の偽造で私腹を肥やす香港の裏組織の幹部ホーとマイクは仲のいい親友同士。そしてホーの実の弟キットは警察官になる。

そんな状況でホーは次の取引を最後に足を洗う決心をし、マイクをつれずに新入りのシンをつれて台湾へ向かう。しかしシンの裏切りで深手を負い、警察に捕まるホー。その敵を討つため敵の店に乗り込むマイクの二丁拳銃による代乱闘の末、自分は足に縦断を浴びてしまう。

そして物語は三年後へ。

刑務所をでたホーに弟のキットは冷たく、またシンはすっかり出世し組織を牛耳り、マイクを下働きのように扱っている。
気質になろうとするホーに執拗にシンが再び引き入れようとする一方で、ホーがいるために出世もできないキットはことあるごとに兄貴を憎む。

シンはなんとかホーを仲間にしようとキットやホーの勤め先を痛めつけ、業を煮やし、次第にホーは抜けられない運命を悟りマイクとともに最後の大勝負にでる。

クライマックスは韓国版同様、港で大銃撃戦である。

後のジョン・ウー作品に見られるスローモーションがふんだんに登場するが、トレードマークになる鳩や様式美にこだわったようなわざとらしいシーンはほとんどなく、ただ繰り返し繰り返しガンアクションがところ狭しと画面に展開するのがこの作品の特徴である。

何度も書くが、かなり荒削りな作品であり、振り返ってみると撃ち合いのシーンだけが記憶に残っているという派手な作品だった。ただ、大勢が評価するほどの傑作かというとそれはちょっと疑問ですね。