くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「おとなのけんか」「地方記者」

おとなのけんか

おとなのけんか
ロマン・ポランスキー監督作品が突然やってきたという感じである。作品は舞台調の室内劇である。

登場人物は四人。二組の夫婦の物語で、一方の子供がもう一方の子供をけがさせたためにその示談の話し合いに被害者の子供の家にやってきて繰り広げるおとなどうしのいわゆるけんかの物語です。

カメラの据える位置が非常に特徴的で、四人のそれぞれが時に味方同士になるペアが代わったりする展開をカメラのとらえる位置で示していく。さらに、一端落ち着いたと思えばまた再燃するための発端になる人物の顔を画面の片面に大きくとらえて背後にほかの人物をとらえる等の演出も施されます。

さらに、いったんは帰りかけエレベーターの前までいくもののそこでまた言い争いが再燃する際に背後に犬の声が聞こえてくるというユーモアあふれる演出も見せる。そんな映像のリズムのおもしろさがとっても楽しかった。もちろん、ジョディ・フォスターを始め芸達者な俳優たちの丁々発止のせりふの応酬の迫力も半端ではありません。

映画が始まると公園で遊んでいる子供たちが遠景にとらえられタイトルが向こうから手前に流れる。背後にテンポのいい音楽が流れています。一人の子供が一団から抜け出たようなシーンの後、画面は代わってジョディ・フォスターの背後からなにやらプリントしているショットへ。

あとはこの部屋を中心に物語が進んでいく。
ジョディ・フォスター扮するペネロペ夫婦の子供イーサンがクリフトフ・ヴァルツ扮するアランとケイト・ウィンスレットふんするナンシーの夫婦の子供ザッカリーにけがをさせられその示談の話が一段落付いたようである。

ところがザッカリーの両親夫婦が帰りかけるとイーサンの両親からのちょっとした一言でまたぶり返し、家を出かけると引き返すを繰り返す。そして、頻繁にイーサンの父親アランのもとに仕事場から電話がかかってきて、そのたびに話が中断される為にその場の人間がどんどんいらだってくるのが前半部分。

そして、途中でザッカリーの母ナンシーが突然嘔吐し、その場にあったペネロペの大事にしている絶版の画集などが汚れて右往左往するのが中盤に描かれ、後半、どんどんエスカレートしていく中、話は子供たちの話題からはずれてそれぞれの夫婦の生活にまで入り込んでくる。

どうやらペネロペの職業は第三国の貧困問題などを扱ってルポを書いていうような運動家であり、ペネロペの夫は日用品を扱う普通の仕事人である。二人の考え方に行き違いがみれらる描写とせりふが飛び交ったりもする。そして、それぞれがそれぞれに不満をぶつけ合ってくるという展開も繰り広げられる。

ザッカリーの父アランは弁護士で、どうやら製薬会社の副作用の問題の訴訟に関わっているようであり、母ナンシーは投資ディーラーで、それなりのキャリアウーマンである姿が見えてくる。

こうして、それぞれの子供の問題が大人の問題になり、話が最高潮に達したところでナンシーがアランの携帯を花瓶に投げ込み、どうしようもなくなったところで終盤へと物語がなだれ込んでいく。

狂ったようにナンシーが花瓶のチューリップをばらまき、最高潮に達したところで、壊れたと思ったアランの携帯が鳴る。一同がその姿を見て呆然として暗転、最初の公園の場面になってエンドクレジットである。

寸劇のようなおもしろさを徹底的なクローズアップの演出で見せてくる室内劇であり、子供の話が夫婦同士の諍いになり、しまいにはそれぞれの個人同士の諍いになっていくというおもしろさ。部屋の廊下へ出る以外はすべて室内の物語ですが、息苦しさを見せるというより、入れ替わり立ち代り動き回る人物をそのせりふと場面に合わせたカメラアングルで映画表現として捕らえていく演出の妙味が見所だったように思えます。
ちょっとウィットとしゃれっ気にもこだわったストーリーを映像テクニックで見せるロマン・ポランスキーらしい毒も散りばめられ中身の濃い作品に仕上がっていたと思います。

「地方記者」
東北映画特集の最後に見に行きました。

田舎町で新聞記者の地方支所を勤める主人公中野(フランキー堺)が奮闘する姿をほのぼのした田園風景と暖かい地元住民との交流を通じて描く作品です。

田んぼのあぜ道を自転車でやってくるところから映画が始まり、一人で平和そのものの村で記事を探す中野の姿が描写される。底へ新人の三浦がやってきて、些細な出来事を追いかけていく中で新聞記者としての心構えを説いていくお話がユーモラスに展開する。特に秀でたものは見られないが、やはり当時の俳優さんの演技力はしっかりしたもので、映画としての楽しみ方が安心してできるのがいいですね。

ある日、沿岸の魚が地元に進出してきた工場の廃液で死んでしまう事件が発生。当時、次第に騒がれ始めた公害問題を取り扱うエピソードが物語の中心になる。
一段落した後、三浦は地元の女性と恋におちて、中野は今日も特種を探しにあぜ道を去っていくところで映画が終わります

たわいのない作品でこれということもないのですが、ちょうどいい長さで気楽に楽しめるプログラムピクチャー的な一本でした。