くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「さよならをもう一度」

さよならをもう一度

フランソワーズ・サガンの「ブラームスはお好き」を原作に、すでに中年の域になったイングリッド・バーグマン、そしてイヴ・モンタンをメインカップルに、この作品の前年に「サイコ」で個性的な役柄を演じたアンソニー・パーキンスを脇に配置したラブストーリーである。

映画の中盤から三分の二あたりまではめまぐるしいほどの台詞の応酬であれよあれよと、ロジェ(モンタン)とポーラ(バーグマン)の恋仲の二人にフィリップ(パーキンス)が絡んでくる下りを描いていく。自由恋愛と恋と結婚の意味を常に問いかけてきたサガンらしいストーリーとムードがじわじわと漂わせるアナトール・リトヴァックの演出は見事な物がある。

40歳にさしかかりすでに5年のつきあいのロジェとポーラ。お互いに仕事も順調でことあるごとにすれ違うが、それはそれで交際が続いていた。しかし、ふと孤独がポーラの心に生まれ始めたとき25歳のまだまだ甘えん坊のような青年フィリップがポーラにぞっこんになってしまう。

ロジェも女遊びはしているものの心は常にポーラにあった。しかし、フィリップの執拗な行動はやがてロジェとポーラの隙間を広げていく。こうして展開する物語は退屈なラブストーリーであるものの決して飽きることなく画面を見つめてしまう魅力がある。それはイングリッド・バーグマンの人並みはずれた存在感と中年とはいえ類まれな美貌による物ではないかと思う。

結局、ロジェとポーラは結ばれ結婚し、フィリップは去っていくが、やはりロジェとポーラのそれぞれの生活は変わらず、再び孤独がポーラの心にとどまって映画は終わる。

2時間という長さはちょっと無理がないでもないが、決して退屈さを生み出すものでもないし、これこそが映画全盛期の一本と呼べなくもないと思う。
サガンの生み出すイメージがじわりとスクリーンから漂ってくる意味でも原作の味をしっかり映像化した秀作だったと思います