くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ファミリー・ディナー」「ゴーストワールド」

「ファミリー・ディナー」

典型的なB級ホラー映画。何かが起こるのではという不穏な空気感で展開していくだけで、これという伏線も凝った演出もなく、ホラー映画だという先入観がラストまで観客を繋いでいく。そして、おそらくそうだったかというラストシーンで、なるほどと納得させてエンディング。もうちょっと工夫やオリジナリティが見られるのかと思ったが、普通のホラー映画以上ではなかった。監督はペーター・ヘングル。

 

森を進む車、広大な敷地の真ん中に立つ建物についた車から小太りの女シミーが降りて来る。出迎えたのは叔母のクラウディアで、料理研究家で一世を風靡したこともあるらしい。今の夫のシュテファンは気のいい男の雰囲気だが、息子のフィリップはどこか行け好かない。

 

シミーは日曜のイースターの日まで滞在する予定だったが、金曜までにと言われる。しかし、クラウディアにダイエット指南を受けることになったシミーは日曜まで滞在することになる。早速絶食させられるシミー。クラウディア夫婦もイースターまでは断食しているのだという。フィリップだけがご馳走を食べていた。フィリップはシミーに、自分は母親に一人でいることを強制されているのだという。それをクラウディアにシミーが言うと、フィリップは病気なのだと言う。

 

そんなフィリップは、家出をしたこともある。森の中にイースター用に木が組まれていてガソリンなどが置かれているのをシミーは見つける。シミーは、何やら怖さを感じ、フィリップとこの家を逃げ出すことにし、シュテファンの持っている門の鍵を盗む。そしてフィリップと準備をするが、翌朝シミーが目を覚ますと、フィリップはシミーの鍵を持って逃げていた。まもなくして、ウィーンの実父のところにいると知らせが入る。シミーがメールしてみると、フィリップから中指を立てた写真が送られて来る。

 

シミーはシュテファンに母の元に帰ると言って送ってもらう手筈になるが、フィリップを失ったクラウディアの寂しがる姿を見て気持ちを変え、イースターの食事を一緒にすることにする。やがてイースターの日、クラウディア夫婦もシミーも断食が明けて美味しく肉を食べる。ベッドに戻ったシミーは、傍にフィリップが大切にしていたナイフを見つける。さらに見当たらなかった自分のスマホを見つけてフィリップの送ってきた写真を確認すると、それは納屋の中だった。

 

シミーが納屋に入ると、切り刻まれたフィリップの死体があった。さっき食べたのはフィリップの肉だった。やってきたシュテファンにシミーはナイフを突き立て、そのまま家を脱出、森へ逃げる。クラウディアが追って来るが、ガソリンをかけて焼き殺して、車のところで死にかけているシュテファンのそばにシミーが座ってカメラが引いて映画は終わる。

 

鍵がなくても簡単に逃げてしまうラストはさすがに甘いが、仰々しいホラーシーンを一切排除して、雰囲気だけでじわじわ怖がらせる演出はそれなりに成功しておるのかもしれない。とはいえ、なんでシミーが小太りでダイエットするストーリーが必要なのかわからないし、普通のホラー映画だったように思います。

 

ゴーストワールド

スカーレット・ヨハンソン17歳の時の作品。とってもリズミカルでちょっと甘酸っぱい青春映画の秀作。ファンタジックな色付けもされ、思春期の少女の危ういほどに壊れやすい一時の心の揺れ動きがとっても素敵なそれでいて切ないラブストーリーとして昇華されています。音楽センスもいいし、映像センスも良い。瑞々しすぎる色合いが素敵な作品でした。監督はテリー・ツワイゴフ

 

ポップな曲で踊っているテレビ番組かダンスパーティシーンか、それに被ってカメラは街の人々を窓越しに捉えて横にパンして映画は始まる。このオープニングがまず素敵。そして高校の卒業式に出席しているイーニドとレベッカ。壇上では奇妙なダンスが始まって二人は思わず引いてしまう。そして外に出て卒業式が終わってこれからに意気揚々とする姿。しかしイーニドには美術の補修を受けないと正式に卒業できないとメモが見つかる。

 

イーニドとレベッカは親友同士で、卒業したら進学もせず仕事を始めて一緒に住むことにしている。レベッカは順調に職を見つけてしまうが、イーニドは持ち前の性格もあってはっきりしない。とりあえず美術の補修に参加するが、口八丁で先生を煙に巻く。二人はイタズラ半分に新聞広告で見つけたいかにもダサい男性シーモアを呼び出して尾行し始めるが、ブルースのレコードマニアのシーモアにイーニドは興味以上に近づくようになり、さらに恋人まで探すことになってのめり込んでいく。そんなイーニドと、順調に住む場所を探し仕事も見つけたレベッカとは溝ができ始める。

 

シーモアはふとしたことからダグという恋人ができる。次第に二人は親しくなる中、それを見つめるイーニドは自分でもわからないままに邪魔をするようになる。それはイーニドのシーモアへの恋心だったのかもしれないが、シーモアは全く気が付かず、ダグとますます親しくなってくる。イーニドはレベッカにも愛想を尽かされ、美術の先生に奨学金の話まで出るほど気に入られたにも関わらず、シーモアに心を奪われてそれも反故になり、父親が探してくれた仕事のこともダメにしてしまう。落ち込んだイーニドは行き場を失ってシーモアの家に行き、ダグとの記念日に買ってあった酒を飲み一夜を共にし、シーモアの家に移り住みたいと言ってしまう。

 

イーニドの心がようやくわかったシーモアはダグに別れを告げるが、イーニドから連絡が来なくなる。レベッカの新居に押しかけたシーモアは、イーニドが最初からからかうつもりでシーモアに近づいたことを話し、シーモアはショックを受けてコンビニで暴れて怪我をして入院してしまう。そんなシーモアを訪ねたイーニドは、最初はからかい半分だったシーモアへの思いを描いたスケッチブックを見せる。そこには、次第にイーニドにとってヒーローに変わっていくシーモアの姿が描かれていた。

 

シーモアどん底を立ち直り、イーニドは、いつも来ないはずのバスを待っているバス停の老人がバスに乗り込むのを見て、自分もそのバス停に行き、入ってきたバスに乗り込んで何処かへ旅立って映画は終わる。軽快な音楽とエンドクレジットの後、コンビニで暴れたシーモアが、男をやっつけたエピローグでエンディング。

 

とにかく、ポップでハイテンポな音楽が映画全体を弾むように盛り上げてくれるし、イーニドのなんともいえない危うい少女の姿と、対照的なレベッカのキャラクター、さらにコンビニの店員ジョシュや、バス停で待つ老人など映画全体がとってもファンタジックな色合いもあるのがいい。素敵で爽やかな青春映画だった。