くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「真昼の暗黒」「ハングオーバー!!史上最悪の二日酔い、国境

真昼の暗黒

「真昼の暗黒」
現実に起こった冤罪事件「八海事件」を元に、まだこの原案になった裁判が係争中に書かれた原作を元に描かれた野心的な作品である。監督は今井正、その年のキネマ旬報ベストワンに輝いた傑作である。

非常に暗い内容の物語であるが、重厚とも呼べるストーリー構成と緩急を取り混ぜ、可能な限りの演出スタイルを駆使して描く見事なリズム感でみる者を釘付けにする。

物語の発端から展開、そして、終盤から結末まで、関わった人々の心理描写もさることながら、当時の人々の考え方、世相なども巧みに織り込んだ橋本忍の脚本がすばらしい。

土方仕事で日々の暮らしをたてる瀬戸内の田舎町。幼なじみに近い5人は常に親しくつきあっているが、それぞれに前科を持っている。中でも小島という男はいつも飲んだくれ金に困っているどうしようもない男である。

映画が始まると仁科老夫婦が惨殺された現場に警官がやってくるところから始まる。斧で殴り殺された夫、鴨居につり下げられた妻、残忍きわまる犯行にすぐに一人の男が容疑者に上がり逮捕されるが、これほどの犯行を一人でしたとは思えないと言う警察の独断的な推測により、単独犯だと訴える小島に執拗な取り調べをし、共犯として残る4人を逮捕する事になる。

身の覚えのない四人は平然と警察に行くが、警察の強硬な取り調べで無理矢理犯行を自白させられる。こうしてこの冤罪事件の物語が始まる。

ぐいぐいとそれぞれの人々の心の中に食い込んでいくような迫力ある演出に次第にのめり込んでいくのである。しかし、そもそも小島の供述も二転三転、時間や犯行の手口の矛盾を最終弁論で弁護士が立て板に水を流すかのごとく解明、容疑者の家族も小島以外は無実になり釈放されると確信し判決の日を迎える。しかし、判決は当初の求刑通りとなり、一気に地獄につき落とされる。

主犯とされた植村が、最後の面会にきた母に「まだ最高裁がある、俺は無実だ」と叫ぶラストシーンに圧倒されて映画が終わる。

非常に陰惨な物語で、しかも結末のでないエンディングであるが、作品の完成度の高さはすばらしいものであった。
小島によって犯行の手口が緻密に語られる導入部のリアリティ、そして、操作が進むにつれて裁判官たちの目の前に明らかになっていく真実、さらにクライマックスで弁護士が、5人の犯行をコミカルに説明し、限りなく非現実的である様子を駒落としやトリック撮影まで利用して映像化する緩急の見事さ、その後の家族の喜々として喜ぶ姿によるワンクッションおいた演出から一気にどん底に落ちるラストまでのすばらしさも、何度思い起こしてもうなってしまいまいます。

好みはあるかもしれないが映画としては一級品でした。
ちなみに、実際の「八海事件」は1968年に単独犯であるとして残る四人は無罪になって結審しています。

ハングオーバー!!史上最悪の二日酔い、国境を越える」
前作があまりにもおもしろかったために、自然とこの二作目に期待せずにはおれないが、やはり完全に失速、期待を裏切った。
舞台をタイに移してスケールアップとサービス精神満載に作った作品なのだろうが、そのために前作でみられたいわばミステリーのような謎解きのおもしろさが吹っ飛んでしまい、しかも品がなさすぎる下品なだけのギャグに終始してしまった。

やはり前作は手始めでもありストーリーや展開にこれでもかと言うほどの工夫があった。当然、画面のとらえ方や見せ方にも見えそうで見えないおもしろさ、ストーリーを追っていく中でのおふざけギャグが満載に盛り込まれ、笑いの中にひと味ふた味のおもしろさがあった。

今回も、ストーリーの基本的な展開は全く同じであるが、冒頭から切り取られた指やリアルな○○○を猿がもてあそぶショットや、完全に吹っ切れたバカ騒ぎで始まっていく。
しかも、途中の展開にもこれといってなるほどと笑わせてくれる伏線もなく、クライマックスではインターポールまで登場するが、何のスパイスにもならない。

結婚式に駆けつけた主人公たちにこれでもかとマイク・タイソンまで登場させたサービスぶり。前作の成功をそのまままき散らした成金映画になってしまった。だから笑えない。
まぁ、無茶に期待もしていなかったとはいえ、二番煎じなら二番煎じらしくスケールアップしてほしかったですね。
やはり前作から脚本担当ががらりと変わったのが最大の原因かもしれません。やはり脚本は大切ですね。