くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「甘い罠」

甘い罠

ほんの些細なことからどんどんほころびが広がっていくというクロード・シャブロルお得意のミステリーサスペンスです。

映画が始まると、一組のカップルが結婚式を挙げている。有名なピアニストアンドレ・ポロンスキーと後妻となるミカである。
その宴会の席上で二人の様々な噂、先妻リズベートの事故死の不思議などが入れ替わり立ち替わり出席者の面々によって語られる。そしてタイトル。

画面が変わると別の家族が友人と食事をしている。法医学研究所の所長をするポロ婦人と娘のジャンヌ、そしてジャンヌの恋人とその母である。その母がふとしたことでジャンヌが生まれたときに駆けつけたアンドレ・ポロンスキーに看護婦が間違ってジャンヌを新生児として見せたという話をする。もちろん、たわいのない出来事で、赤ん坊の入れ替わりなの全くなかったのだが、何か引っかかるものがあるジャンヌは後日、突然ポロンスキーの家を訪ねる。

ジャンヌもピアニストの卵であるという血筋がどこか不思議な縁を感じたのだろうか。
快く受け入れたアンドレは翌日からジャンヌのレッスンをすることに。
アンドレの家にはギヨームという息子がいる。彼は実の母がなぜ車の事故を起こしたのか不審に思っている。

アンドレの妻ミカはチョコレート会社の社長、いつもココアを温めてギヨームに与えているが、たまたまジャンヌの前でこぼしてしまい、服に付いたココアを彼氏に分析させるジャンヌ。そして、そこに睡眠薬の成分を発見する。

ひとつ、またひとつと次第に疑惑が広がっていくストーリー展開はまさにクロード・シャブロルサスペンスの真骨頂である。
どうやらミカがアンドレの先妻リズベートに薬を飲ませたらしいと次第に物語が膨らんでくると、今度は実はジャンヌは人工授精で生まれたことが母の口から語られる。

次々と新しい謎が明らかになり、見ている私たちは、実は精子を提供したのはアンドレではないかと疑い始めるのである。もちろん、その謎は明らかにならないが、この、すべて見せてしまわないミステリー、のおもしろさを堪能させてくれるのです。

そして、ミカの次のターゲットとしてジャンヌのコーヒーに睡眠薬をいれ、車に乗るようにし向けるが、今度は大事故にならず軽傷ですんだという知らせがアンドレの元に入る。そのときにはリズベートを死に追いやったのがミカであるとアンドレが認識しミカに詰め寄る。

一人放置されたミカがソファで涙を流しうずくまるシーンで映画は終わりますが、結局、具体的な動機は明らかにされない。財産目当てでも、嫉妬でもない。不思議なエンディングはいつものことながら、どこかスタイリッシュでもありますね。