くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「システム・クラッシャー」「彼女たちの舞台」(4Kリマスター版)

「システム・クラッシャー」

面白い作りを予感させるオープニングだったが、同じシーンの繰り返しと登場人物の立ち位置が見えないなんともまとまりのない脚本が勿体無い映画だった。結局、大人が悪いのか、母親が悪いのか、主人公の少女が異常なのかその拠り所が見えてこない。やたらサイケデリックなタイトルと、主人公が常にピンクを身につけている意味も分かりづらく、小道具やエピソードがラストになんの意味も見せてこないのは意図的なのか未完成なのか、ちょっと未熟さが見える映画でした。監督はノラ・フィングシャイト

 

主人公ベニーが施設でなぜか暴れている。9歳の彼女は幼い頃に父親にオムツを顔に押し付けられたりした虐待のトラウマで顔を触られると狂ったようになり、手がつけられなくなった母親はベニーを施設に任せてしまう。ベニー自身は母親の元に帰りたいが、結局、一時保護施設や病院に保護される日々を過ごしていた。

 

そんな時、非暴力トレーナーのミヒャはベニーを学校まで付き添う仕事に就く。周囲の人たちが手に負えない姿を見たミヒャは、三週間一対一で山小屋に隔離する方法を提案する。次第にミヒャに心が動いていたベニーは大喜びで山小屋生活を始めるが、何かにつけて問題が起こる。牛乳をもらいに行った牛舎で、番犬を忌み嫌ったり、夜中におねしょしてミヒャのベッドに潜り込んだりする。

 

ミヒャは次第にベニーに親近感を持ち始め、規則違反と分かりながら自宅に一晩預かってしまう。やがて施設に戻ったベニーだが、信頼する児童福祉職員のバフィアはかつて保護してもらったジョバンナの家庭にしばらくとどまれるようにする。しかし、結局そこで一緒に暮らしていた少女がついに顔を触ったことでベニーは騒ぎを起こしてしまう。母は、夫と別れたので、ベニーを引き取ると言うのだが、結局、それも直前で反故にしてしまいベニーは泣き叫ぶ。

 

バフィアはケニアの施設での療養を提案するが、ベニーは拒否し、勝手に施設を抜け出してミヒャの家にやってくる。ミヒャの妻はついベニーを泊めてやるが、翌朝、ミヒャの幼い息子を抱いて部屋に閉じこもってしまう。なんとか息子を取り戻したが、ベニーは一人森に走り去る。ミヒャにも手に負えない状況になっていた。ベニーは夢の中でこれまでの様々を思い出す。

 

寒さで眠ってしまったベニーは保護され、ケニアの施設に行くことが決まる。空港でバフィアに見送られ入管していくベニーだが、通関で突然逃げ出し、テラスから飛び出して映画は終わる。

 

結局、三週間の山小屋のエピソードはなんだったのか、バフィアやジョバンナ、ミヒャとの関係、母親の存在感などがどれも曖昧で描き切れず、やたら暴れるベニーの行動を繰り返し繰り返し描くだけの流れになっているのがどうにも物語が見えてこない結果になった。面白いリズム感を持っているような演出だったがストーリーテリングが今ひとつという作品でした。

 

「彼女たちの舞台」

正直なところ、お話がつかめなかった。劇中劇とリアルタイムの出来事が交錯するのだが、人物名が把握できず、展開が読めないままにラストシーンを迎えた映画でした。監督はジャック・リヴェット

 

一人の女性アンナがある入り口に入るとそこは舞台で、彼女はこれから演じる役をいきなり演じ始め、演出のコンスタンスが指示する場面に移って映画は幕を開ける。古い屋敷を学校にした演劇学校に通うアンナ、クロード、ジョイス、ルシア、セシルは一緒に暮らし舞台の稽古に通っている。

 

ある日、展覧会に行ったアンナは帰り道、男に襲われかかり一人の男に助けられる。その男はアンナを送る途上で同じ演劇学校のセシルが、恋人のことで危険な目に遭いそうだと告げる。不審に思ったアンナがジョイスに尋ねてみると彼女もその男から同じような話を聞いたことがわかる。舞台の稽古は進むがセシルは稽古に身が入らない風だった。

 

例の男が屋敷の周りをうろつき何かを探しているのか四人の女性を誘惑するようになってくる。そんな時、セシルの恋人のリュカが逮捕されるニュースが流れる。そして屋敷を彷徨いていた男はトマという司法警官だとわかる。トマはリュカがセシルに渡した重要書類が入った金庫の鍵を手に入れようとしていたのだが、たまたまセシルが暖炉に隠した鍵を見つけたルシアは、鍵をセーヌ川に捨ててしまったと告白する。

 

それでもトマは執拗に四人に鍵のありかを問い詰めてくる。四人はトマの存在が疎ましくなり、ルシアは酒に薬を入れてトマを殺そうとするが見破られ、隠していた鍵を奪われる。しかし、出て行こうとするトマをジョイスが殴り殺してしまう。翌日、稽古場に刑事が来てコンスタンスを連行していく。どうやらコンスタンスは、逃亡したリュカを匿っていたらしい。演出がいなくなった後もアンナたちは芝居の稽古を続けて行って映画は終わる。

 

というお話だったと思いますが、なんで彼女たちが執拗にセシルを庇うのか、なぜトマはそこまでこだわるのか、ミステリーというジャンルの作品だと紹介されているが、全体に謎解きの緊張感は全くなく、と言って女性たちの確執が描かれているわけでもなく、人物名がはっきり区別できないままに物語が展開し、なんとも把握しづらい映画だった。