くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「女と銃と荒野の麺屋」

女と銃と荒野の麺屋

コーエン兄弟の「ブラッド・シンプル」という映画を舞台を中国に移してチャン・イーモウ監督がリメイクした作品。映画が始まってからエンディングまで映像の洪水とチャン・イーモウらしい様式美の世界、さらにコーエン兄弟の物語らしいブラックユーモア満点のコミカルシーンの連続に終始笑いの絶えない楽しい映画でした。

といって、ギャグコメディではないので、ばか笑いが次々と発生するわけではなく、フフと思わずこみ上げてくるコミカルなショットが合間合間に挟み込まれるという構成がなんともおもしろいのです。そして、自問自答しながらつっこみを入れてしまうような陽気な笑いもふんだんにある。そんな中にしっかりとしたスリリング且つサスペンスフルな展開でストーリーが進んでいくから実に楽しい。

映画が始まるとタイトルの画面にドキューンというピストルの音で引き裂かれて物語の舞台が現れます。そこは荒野の真ん中に建っているワンさんの麺屋。
突然刃物を振り回している妙な格好の外国人が店の中で暴れている。そして一段落するとなんとそのおっさん突然ピストルを数丁出して、これこそ最新の武器だと説明。それを聞いたその店の女房が買うところから物語が始まります。

さて、この女房、このピストルでなにをするのかと言えば、自分を虐待する夫ワンを殺してやりたいのである。そして、自分はその店の店員リーと不倫関係にある。
一方、ワンもまた女房の不倫を疑って腹黒い警官に女房を殺すように働きかける。

この二人の丁々発止のやりとりの中、ワンのかねに目がくらんだ警官はワンを撃ち殺して、さらに女房をも殺しにくるというやりとりへ物語はどんどんエスカレートしていく。
迫ってくる警官に逃げまどう女房たち。コミカルな中にチャン・イーモウらしい映像がところ狭しとでてくるし、時折目の覚めるような景色のショットが挿入される。

デジタルハイビジョン映像のハイスピードの景色のショットが本当にうっとりさせる一方で、悪徳警官が女房たちを殺そうと迫る。そして、間一髪女房の持っていたピストルが警官を撃ち殺し、警官は息絶える寸前に、あの世でワンに挨拶してやると捨てぜりふで死んでいって映画が終わります。

どことなくコーエン兄弟のイメージがちらほらと垣間見えるのですが、チャン・イーモウも映像派の監督なのでどのあたりがどっちのオリジナルかは「ブラッド・シンプル」を残念ながらみていないので何ともいえないのが残念です。

いずれにせよ、チャン・イーモウ美学が炸裂する一本で、それだけで十分に見応えのある映画でした。本当に楽しいですよ。