くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ラビット・ホラー3D」

ラビット・ホラー

ホラー映画の清水崇監督が名カメラマンクリストファー・ドイルを迎えて作ったいわゆるB級ホラー映画である。ただ、主演が今をときめく満島ひかりだったので、その点だけで興味津々見に行った。

映画はまったくつまらないホラー映画で、テレビの「世にも奇妙な物語」のほうがよっぽど気の効いている。というより、3D映像が実に暗くて、確かにホラーなのだが全編うす暗がりのショットが多いために暗さだけがストレスになってくる。もう少しシャープな映像が繰り返されても十分な演出がなされているように思えるのに本当に残念。

映画が始まると宣伝フィルムにも使っている子供がうさぎを石でたたき殺すシーン。駆け寄る満島ひかりとともに返り血を浴びるファーストショット、そして螺旋階段のようなシーンが流れタイトルバックとなる。
幼いころに瀕死のうさぎを安楽死させるためにたたき殺した弟大悟は以来学校へ行かなくなった。一方母親の違う姉キリコはいつの間にか口が利けなくなっているというナレーションが流れる。ありきたりの導入部であるが、一級品を期待しているわけでもないのでこの程度で良いかと納得して見続ける。

いかにもジャパンホラーといえるような立体映像を駆使した構図で不気味なシーンが続くが、なんとも怖くない。ショッキングなショットも冴えがない。うさぎが映画館のスクリーンから飛び出してきて大悟が受け取るシーンからどんどん恐怖がエスカレートしていくのか、着ぐるみのうさぎが夢か幻想かの世界へ大悟をいざなっていくシーンが前半の見せ場だが、遊園地のシーンもかつてのウルトラQのエピソードに見られたすばらしいシーンほどの見事さも生み出してこない。

結局、誕生日にうさぎのぬいぐるみをもらった幼いキリコはそのとき義理の母親をメリーゴーラウンドで事故で亡くし、そのとき母親が流産したことで、ぞの流産したのが弟だったというトラウマから大悟の幻想を抱くようになったという真相らしいが、つまりは大悟とキリコは同一の存在でそれが目くるめく迷宮の世界となるストーリーのようである。

しかし、父親が絵本作家で何度も語られる「人魚姫」の引用もいまひとつ物語りに彩りを生み出さないし、キリコの追い詰められた精神状態の緊張感も伝わってこない。といって、うさぎの不気味さもいまひとつインパクトに欠ける。
ラストで、大悟とキリコが入れ替わり、キリコが死んでなぜか現実の姿になった大悟が父親と家に帰るシーンで幕を閉じる。

こういう低レベルのホラーに甘んじていてはいずれ清水崇監督も先が見えてしまう。それなりの才能もあるのだからもっといろんな映像にチャレンジしてほしい。今回、何のための3Dなのかが不明な一本でした