くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アギーレ/神の怒り」

アギーレ神の怒り

「タイム」誌が歴代映画100選に選んだというヴェルナー・ヘルツォーク監督の代表作。
アマゾンの奥地に伝説の黄金郷エル・ドラドを求めて進むスペインの探検隊の物語を幻想的なカメラワークで描いた作品である。

事の起こりがテロップで説明されるといきなりアマゾンの奥地に進むアギーレたち探検隊の蟻のような姿が真上からジャングルを捉えた驚愕的なカメラアングルで映し出されます。右手にはもやに曇るがけ下でしょうか、そのアングルがこの作品が何のものではないと語るかのようです。

探検隊の副隊長はアギーレ(クラウス・キンスキー)、隊長はピサロである。先住民の襲撃を恐れながら奥へ奥へと進みますが、エル・ドラドの姿はなかなか見えてこない。ピサロはいかだに40人を分けて先鋒を務めて情報を収集してくるようにアギーレに命じます。
物語はこのアギーレがいかだを率いてアマゾンの川を進んでいく様子を描いていきます。時に見えない先住民の矢が隊員の命を奪い、激流に立ち往生するいかだに手を焼きながら進むうちに、次第に自らが征服者としてエル・ドラドを発見し、行く末はスペインが征服したメキシコなども奪い取るという壮大な夢に駆られていく。

延々と流れる川を進むいかだの姿、異様な状況に囚われていく隊員たちの極限の心理。次第に狂気を帯びてくるアギーレの姿がじわりじわりとストーリーに不気味なムードを生み出していくさまは実に見ごたえがある。というより怪優クラウス・キンスキーの個性がこの作品を牽引しているといったほうがいいかもしれません。隊員の一人をエル・ドラドの王に任命したり、黒人の奴隷をまぽっ裸にしてそれを盾に先住民の村を襲いに行ったり、近づいてきた先住民の二人をなぶり殺しにしたりと、クラウス・キンスキーの人間離れした演技が本当に恐ろしいほどに個性的であるのです。

どこか異様な世界を描いているようにも思えますが、映される画面はひたすら川を流れるいかだの姿で、正直なところしんどいところもあります。
そして、隊員たちすべてが死んでアギーレ独りになるクライマックス。流れるいかだの上でスペイン本国さえも手に入れようと叫び、「なんと偉大な反逆者なのだ」と絶叫するラストシーンはどこか「フィッツカラルド」のラストシーンと重ならなくもないです。

一種独特の作品ですが、クラウス・キンスキーの映画であり、彼の存在がこの作品の価値に貢献したことは間違いない一本だったと思います