くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ピッチ・パーフェクト」「新宿スワン」

kurawan2015-06-01

ピッチ・パーフェクト
何とも中途半端な映画だった。心理描写、人物描写、ストーリー構成、物語の展開、どれもこれも、ぷつりぷつりと途切れ途切れに終わってしまって、まるでスクラップブックのようで、まとまっていかない。

しかも、見せ場のアカペラシーンも一部だけしか映像にならず、しかもクライマックスさえも適当に終わらせる。監督はジェイソン・ムーアである。

映画は、大学のアカペラチームの決勝大会、
女子チームのリーダーが観客の前で、嘔吐するするシーンに始まる。

そして、一年後、主人公ベッカが大学にやってくるところから本編へ。音楽ミックスを趣味にする彼女の、このオープニングがなかなかテンポよくていいのだが、後はもう、全くだめ。しかも、下品な演出で、映画が汚くなってしまう。

ストーリーは簡単、チームメイトたちの葛藤からやがてまとまり、決勝大会で優勝するまでを描くものだが、途中の確執や、ボーイフレンドとの溝、なにもかもが、全くちゃんと演出描写されていないので、なんの話かわからなくなるのである。

せりふの雑さ、構成の適当さ、脚本もよくない。

前半で、カップを使ったベッカのパフォーマンスが話題になったというが、いったいこれは映画の中でどういう位置づけなのかも見えない。

テンポよく進むはずの音楽ガールズムービーのはずが、とにかくしんどい映画だった。


新宿スワン
園子温監督作品なら、もう少し、こってりした映像を期待したが、原作もあるということもあり、また、舞台が新宿歌舞伎町の風俗街ということもあり、やや緩和された感じだった。

結果的に、それほどクオリティは低くはないものの、園子温作品としては並の完成度になった気がします。

映画は主人公龍彦が新宿に流れてくるところから始まる。そこで、スカウト会社の幹部真虎に目を付けられ、スカウトマンとなるところから物語始まるが、スカウトマンとしてのプロフェッショナルな姿の演出は控えめに、かつての中学の同級生で、宿命の秀吉との再会と友情が、その根底に流れているストーリー展開として進む。

間に、スカウトした女性たちの人間ドラマのエピソードを重ねていくが、オムニバス調につづられる物語が、根幹のストーリーをぼやけさせたのがちょっと残念。さらに真虎たちの覇権争いの黒い世界、歌舞伎町の魑魅魍魎という雰囲気も、盛り込みすぎた感じで、今一つあっさり見えてしまったのは、物足りないといえば物足りなかった。

ラスト、秀吉が、かつての同級生と知った龍彦とセンチメンタルになる展開と、中学時代を回想しての画面のオーバーラップの演出は、ちょっとお涙ちょうだいであるが。逆に園子温映画に見えないほど、繊細すぎるムードを生む結果になった感じ。

全体におもしろいし、決して飽きないのだが、一本筋金の通ったムードが味わえなかったのは残念。でもおもしろかった。