くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「プレイー獲物ー」「アタック・ザ・ブロック」

プレイ

「プレイー獲物ー」
とってもおもしろい物語だし、あれよあれよと間断なく続く展開に時を忘れるほどなのですが、何かが物足りない。そんなスリラーサスペンスの佳作でした。

濃厚なセックスシーンから映画が幕を開ける。主人公フランクは銀行強盗で服役中だが、まもなく刑期を終える。妻が訪ねてきて、一室でSEXをしているってどんな刑務所?ここは賄賂が飛び交い、看守はすぐに買収されて何でも思いのままなのだ。フランクの同室にモレルという婦女暴行の囚人がいるがどうやら冤罪らしいが、それも謎。

仲間にリンチされかけたモレルをフランクが助けたために先に出所するモレルはフランクのために頼みごとを受ける。それは金の隠し場所を暗号で妻に託すものだった。ところがこのフランクに一人の憲兵が訪ねてきて、モレルは本物の異常者だという。

不安を感じたフランクはうまく脱獄、妻の元へ。しかし誰もいない上に妻は殺されていた。娘をモレルにさらわれたと確信したフランクはモレルを探す。一方脱獄したフランクをクレール刑事が追う。こうして三つどもえの追っかけとサスペンスとなって展開していく。とにかくこのフランクがむちゃくちゃタフ。こんな主人公何かの映画でも見た気がする。

婦女暴行殺戮のぬれぎぬまで着せられたフランクを追うクレール。真犯人モレルの正体がいつあかされるかというサスペンス。フランクの娘(これがめちゃくちゃかわいい)は無事助かるのか?そのスリルに最後まで飽きさせない。

結局、モレルは射殺され、フランクも崖から落ちる。しかし養護施設にいる娘に一通の手紙が来てフランクの生存をにおわせてエンディング。

と、こうして書くと本当におもしろい映画のようだが、脚本がよくないのか、登場人物がてんこもりでそれぞれを同じレベルで描写しているためにまとまりがない。最後にフランクをしとめた老人は終盤で突然登場するし、クレールの上司もいまひとつなのに妙に存在感を表にしてくる。クレールの同僚もフランクを助ける憲兵も今一つ人間が描き切れていない。真犯人モレルに気がつく下りもやや弱い。結果、フランクの物語がかすんでしまったのだ。

もっと、きれのいい脚本で、登場人物も丁寧に描写し一本筋を通した演出を徹底すればもっとおもしろかった気がしますが、内容はなかなかのものでしたからまぁいいとしましょう。


アタック・ザ・ブロック
いやぁ、おもしろかった。「キック・アス」を見たときのような爽快感となぜかじわっとくる感動、ハイスピードな展開にわくわくするおもしろさ、子供に戻ったような充実感の中にどこか大人のメッセージさえ見え隠れする。そんなエンターテインメントに出会ったという感じです。

ショーン・オブ・ザ・デッド」「スコット・ピルグリムvs邪悪な元彼軍団」のスタッフが製作、ジョー・コーニシュが初監督をした作品で、凶悪なエイリアンを悪ガキ軍団が迎え打つというお気楽なSFアクション。でも、それが実におもしろいし、ちゃんとつじつまもあっているからまた楽しい。

南ロンドンの公営アパートが建ち並ぶ町。彼方に花火があがっているが地元の悪ガキたちも打ち上げ花火や爆竹でお騒がせをしている。そんな光景を俯瞰でとらえ夜空には満天の星。そのひとつが流れ星のように流れるというファーストシーンがまず観客をわくわくさせる。

一人の女性サムが携帯で家に電話をしている。暗い夜道、向こうに自転車に乗ったいかにも悪そうな少年たちがたむろしていて危険を感じるサム。予想通り彼らはサムに近づいてきて金品を迫る。しかし、まだまだ子供に近い彼らはどこか背伸びしている感じがする。その精一杯の強がりもまたこのシーンをほほえましいものにさえする。ところがそのかつ上げの最中にそばの車になにやら落下。壊れた車をのぞくと牙をむいた獣が悪ガキのリーダーモーゼスに襲いかかる。すんでのところで逃れたものの、プライドが許さないモーゼスはその化け物が逃げ込んだ小屋に花火を打ち込み突入して殺してしまう。そして、その遺体を同じアパートの麻薬栽培している温室の中におく。

ところが、その直後から真っ黒な毛むくじゃらで歯だけが光る凶暴なエイリアンが次々と降り注いできてはモーゼスたちを襲い始める。そこへサムも加わり、自分たちのアパートが危機に陥ったとモーゼスたちは猛反撃をする。背中に刀を背負ったモーゼスの出で立ちや、少し年下の少年たちがおもちゃの宇宙ガンをもってエイリアンをさがしたりと一見お子さま向けのような装いながら襲ってくるエイリアンは容赦なく人間を食いちぎってグロテスクに殺戮してくるからもう大変なのだ。

やがて、襲ってくるエイリアンは実は最初のエイリアンが出していたフェロモンを求めてやってきたもので、最初のエイリアンの血をあびたモーゼスにふれた少年や警官たちが襲われていることに気がつき、モーゼスは自分をおとりに大量のエイリアンを一気に処分する計画を立てる。

フェロモンにふれていないサムにモーゼスの叔父の部屋にガスを充満させ、モーゼスが凶暴エイリアンを引きつけてその部屋に集め花火で一気に破壊する。自分はすんでのところで窓のしたにぶら下がり助かる。それを見上げるアパートの住人たちの歓声。悪ガキのリーダーだったモーゼスはヒーローになる。しかし、警官に逮捕される。「あなたを襲ったのはかれらですか?」と聞かれたサムは「違います」と答える。感動のラストですが、同じアパートの住民だったら襲わなかったという終盤のモーゼスのせりふ、さらに黒人だけを襲いにきたんじゃないのという前半部分のせりふなどから、スラム街の住民たちと一般人との拭えない差別意識へのメッセージも見え隠れする。

単純なSFアクションで終わらせない深さのある娯楽映画でしたが、徹底したエンターテインメントでもよかったといえばよかったかもしれない。いずれにせよ、スピード感あふれる展開と演出、テンポよい物語の中にホロリと感動させる心打つ物語も交えられたなかなかの秀作だった気がします。でも本当におもしろかった。