くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ジョイフル♪ノイズ」「カエル少年失踪殺人事件」

ジョイフル・ノイズ

「ジョイフル♪ノイズ」
この手の音楽映画は「天使にラヴソングを・・・」が有名だが、嫌いなジャンルでもないので見に行きました。

とにかく音楽はいいのです。冒頭、この物語の主人公たちが歌う聖歌隊のシーンで映画が幕を開ける。そしてそこで指揮をするクリス・クリストファーソン扮する男性が突然、体調を崩しそのまま葬儀のシーンへ。

クィーン・ラティファ扮するヴァイとドリー・パートン扮するG・Gの二人の妙な競争心が物語の中心になりそれぞれの孫オリビアとランディの若い二人のラブストーリーが脇に語られていく。監督はトッド・グラフという人です。

物語は寂れた町の聖歌隊がやがてロサンゼルスでジョイフル・ノイズというコンクールで優勝するというありきたりの物語なのですが、クライマックスまでの様々なエピソードが実に希薄で抑揚がないためにどれがポイントなのか全く見えてこない。ヴァイとG・Gの言い争いのおもしろさも今一つ盛り上がりに欠けるし、クライマックスで突然登場する聖歌隊のメンバーたちの姿などなどそれぞれの人物描写が実に適当だったために最後の盛り上がりに欠けてしまう。

ドリー・パートンが売りの映画のようでやたらとアップや歌うシーンが登場するが、さすがに彼女も年齢には勝てず、かつてのような抜群の存在感は見られないのが残念。

「天使にラヴソングを・・・」はウピー・ゴールドバーグの抜群のカリスマ性が作品を牽引した感じでしたが、クィーン・ラティファとドリー・パートンではさすがに役不足だったようです。

若い恋人たちのエピソードもありきたりで、ストーリーに深みをもたらす効果はなかったし、ヴァイの息子でやや自閉症気味の少年のエピソードもストーリーの中で生きてこないのがもったいない。要するに脚本が悪いのだといえばそれまでだけれども、楽曲がやたらきれいなので本当にもったいない映画に仕上がってしまったみたいです。

「カエル少年失踪殺人事件」
韓国で実際に起こり迷宮入りになった事件を元にしたサスペンスミステリーである。韓国映画独特の陰惨なムードが全編に漂い、登場人物の誰もが人生のどん底につき落とされていく様がリアリティとミステリアスな展開で描かれていく。

真っ赤なマントを羽織った一人の少年が駆けていくシーンから映画が始まる。途中で友達と会い、楽しそうにふざけている。時は1991年大邸、統一地方選挙の日に事件が起こる。帰ってくるはずの少年が帰ってこないという警察への通報で捜査が開始されるが5人の少年が行方不明になる。

ここに、一人のジャーナリストカン・ジスンの姿がある。彼はシカにまつわる報道で賞を取ったものの、やらせだった為に糾弾され大邸に左遷される。そこで出くわした五人の少年の失踪事件を暴いてやろうとたまたま見た資料の中でファン教授が語る仮説に注目する。

彼は事件の犯人は少年の親の一人で、選挙を混乱妨害するために仕組んだというのだ。

早速、カン・ジスンはファン教授をおしたてて、その勢いで警察はその親の家を捜索するもなにもでてこず、カン・ジスンは再び糾弾され、ファン教授はその地位を失う。

前半部はカン・ジスンやファン教授を中心として、ひたすら名声だけを求める展開が中心になるが、約10年後の後半からミステリアスな展開が次第に物語のウェイトを高めてくる。山中で五人の遺体が発見され、その検死を行った際に、殺人は独特の鈍器で殴られたものであること、結び目が本結びと呼ばれる釣りをする人間の行うものであることであるのをカン・ジスンが情報を得るのである。

人を欺いてまで名声を得ようとしていた自分の姿に嫌気がさしていたカン・ジスンは是が非でも真犯人を捕まえるべく多方面から情報を集め、たまたま被害の少年の家の前に止まっていた車から犯人とおぼしき男を突き止めその住まいを突き止め、部屋にあった箱の結び目やらから確信を得る。そして、捕まえるべく家の前で待ち伏せるが迂闊にも寝てしまい。たまたま帰った犯人はカン・ジスンの素性を知ってしまう。

犯人はカン・ジスンの娘を拉致し、すぐ返すもののカン・ジスンに圧力をかける。カン・ジスンは解放された娘が乗っていた車を必死で追いかけ、その男が牛の屠殺上で働いていることを知るのだ。

凶器になった鈍器は牛を屠殺するときのものらしく、犯人の勤め先へ追いつめるまでの緊迫感あふれる展開はとにかくサスペンスとして一級品のおもしろさがあります。

ただ、ふとこれが実話を元にしているということを思い出すと、思わずリアリティの怖さがよみがえってくるので、ぞくっとする事も確かです。

結局、証拠がないままにカン・ジスンは犯人を捕まえられず、事件は2007年時効になったというテロップでエンディングになる。

果たして彼は本当の犯人だったのか?それは今の謎であり、カン・ジスンの存在自体はフィクションに近い描写なので、これもまた映画という媒体のなせる結果なのである。

畳みかけるように組み立てられた脚本が本当に見事で、前半のリズムが中盤から後半に駆けてスピードを増していく演出とコラボレーションして、重厚なムードを最後まで途切れさせない作品として仕上げられています。なかなか見応えのある映画でした。被害者の親御さんのことを考えると手放しでおもしろかったという感想は書きづらいですが、作品としてはおもしろかったというのが素直な感想です。