くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「外事警察その男に騙されるな」「カモとねぎ」「大盗賊」

外事警察

外事警察 その男に騙されるな」
NHKの「ハゲタカ」のスタッフが描いた硬派のサスペンスドラマで、期待の一本でしたが、期待通り非常にシリアスな見事な作品でとってもおもしろかった。テレビドラマの映画版ではありますが、そんなことは微塵も感じさせない迫力を堪能しました。

クローズアップを中心としたカメラアングルと時に手持ちカメラで迫真の緊迫シーンを作り出し、終始緊張感を途切れさせない映像でぐいぐいとストーリーを語りかけていく演出の妙味は不気味なほどに迫力がある。

北朝鮮のテロ組織が計画したソウル核爆破計画。冒頭ソウルの橋を一人歩く果織のシーン、そこへ駆けつける韓国のパトカー、一枚の写真が道に落ちる。このファーストシーンから映画が始まる。主人公で政府の警察組織の一部外事警察に属する住本が韓国で拉致されている徐博士を救出する場面。東北の震災であれた大学で核兵器の起爆装置に用いることができる装置の設計図の入ったハードディスクが盗まれるシーンと、畳みかけるような導入部。

韓国の諜報機関NISと日本の警察組織との確執。韓国との間で貿易をする青山という韓国人を監視する住本たちの前半部分のサスペンスフルな展開から、果織を引き込み、青山が殺されてNISの計画が表になり、住本たちとNISの安たちとの作戦に移って舞台は日本から韓国へと範囲を広げていく展開のおもしろさは、原案の味もあるだろうが、演出のテンポで生み出した絶妙の展開と呼べる。

そしてクライマックス。核爆弾を完成させた徐たちの手元にあるスイッチが偽物で、その本物が青山の自宅で発見、それを持って果織と安、住本がアジトへ集まる緊張感あふれる展開から、SWATの突入で主犯が殺され、徐が自らスイッチを入れて起動する核爆弾。そして序の自殺。数分後の爆発を期限に果織は脱出、冒頭の橋のシーンに被さる。住本が果織と徐が写っている桜の写真の日付が解除キーだと気がついて入力して危機一髪を回避。

ところが、住本は一人の男に金を渡す。徐と果織のDNA鑑定も嘘であったことをにおわせ、さらに果織をおそった韓国人らしき男とも関係があったことをにおわせる。いったいどこまで住本は関わり、計画したのか、まさに化け物のような存在として締めくくるエンディングが実に見事。

近頃見た日本映画の中では白眉の傑作と呼べるストーリー構成と見事な演出が光るなかなかの秀作でした。とにかく本当におもしろかったです。

「カモとねぎ」
お世辞にも秀作とか呼べる映画ではないけれども、次から次へと軽いタッチの詐欺犯罪を繰り返す主人公たちのお話が絶対に飽きさせない。

途中に公害問題なんかもはめ込んでいくというまさに製作年度を考えさせる典型的な娯楽コメディでした。

それにしても主演石黒新吉を演じた森雅之って、あんなに大根だったかなと思えるくらいにどこかちぐはぐで役に似合わない。それがまたこの映画のおもしろさであるし、すぐに体を見せる緑魔子東映から呼んでくるという当時の東宝の力もかいま見えたりする。高島忠夫が例によってお気楽なおっさん丸木を演じるが、もうちょっと丁寧な映画にもどんどんでていたらもっとすごい俳優にもなっていたかもしれないなんて思ってしまいます。

ボートレースでスクリューをねじ曲げて大金をせしめるファーストシーンから、新吉がすんんでの逃亡直前に捕まるエンディング。海外へ逃亡するつもりが沈没して漂流する丸木らのお金を拾うショットなど、まさになんのリアリティもない典型的なプログラムピクチャー。それでも、見せ場が絶対の途切れない徹底したエンターテインメント根性に思わずにんまりしてしまいます。

当時なら飛ばすかもしれない平凡な映画ですが、今となってはレアな一本。これも将来に夢いっぱいだった懐かしい昭和の日本の姿なのでしょうね。

「大盗賊」
これまた、昨日の「奇厳城の冒険」よろしく破天荒な冒険活劇で、配役まで何となく似通っているのがとにかく笑える。

映画が始まると盗賊をとらえて樽に入れて火あぶりにするシーンから。ところが樽の中から石がでてきて、まんまと盗賊はすり替わって逃げている。
船の中で仲間たちと三船敏郎扮する主人公助左衛門が大音声をあげて「俺は海賊になるぞ」と、まるで「ワンピース」?とつっこみたくなる。

そして例によってアジアの訳の分からない国を舞台にした大活劇がはじまる。

その国の王様が志村喬だったり、「奇厳城の冒険」と同じように妖婆や仙人がでてきて同じような設定で暴れたり妖術を使ったりとどうしようもないエンターテインメントが炸裂。なぜか妖婆ににらまれると石になるというどっかで聞いたような妖術が登場し、最後は鏡に映った自分を見て石になる展開まで何かで読んだようなお話が続く。

ラストは悪人の宰相は殺され、病の王は元気になり、お姫様はめでたく明の国の若者と結婚。助左エ門は再び船に乗って大海原へでていってエンディング。

とまぁ、ものすごい配役陣でくそまじめにこんなある意味ばかばかしい娯楽映画を作っていた懐かしい映画黄金期の一本。とにかく贅沢すぎるエンターテインメントでした。

こういう映画を見ると、映画の端役ででている俳優さんたちがテレビの特撮ドラマに主役級ででていることに気がついたりして、まだまだ映画とテレビの差別化がしっかりしていた時代だったのだと納得したりもできて楽しかった。