くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「監視者たち」「フランシス・ハ」「太陽の坐る場所」

kurawan2014-10-06

「監視者たち」
典型的な韓国アクション映画であるが、こういうのを作らせると本当にうまい。作品としての完成度は非常に低いのだが、ハイテンポで見せるストーリー展開と、細かいカットでつなぐエピソードの組立が本当にスピーディなのだ。

ここに、上質な作品のような緩急とリズムが備われば、傑作になるだろうと思えるが、これもまた途上段階といえるのかもしれない。

抜群の動態視力で、町中に潜伏する犯人を的確なチームワークで追跡し、逮捕する。決して、派手な格闘も銃撃もないが、その緻密なチームプレイの連携を楽しむのである。

一方、敵側のリーダーもまた抜群の観察力と、並外れた殺戮マシン故に、不気味な存在として登場、警察側主人公の、天才的な観察力と上司の見事な指示の連携で追いつめていく緊迫感がすばらしい。

いったい、このおもしろさはどこに起因するのかと思わせるが、独特の韓国映画の緊張とリズムなのだろう。

カメラの切り返し、シーンの転換の早さ、次々と進むストーリー展開がいいのである。しかし、どこかもう一歩、ハイレベルの作品になり得ない何かがある、と韓国映画を見ると思ってしまう。それでも、おもしろいそれは間違いなく楽しめる。


「フランシス・ハ」
とっても美しく、リズミカルな音楽を背景に、テンポよく展開するちょっとしゃれた一人の女性の物語。

これという物語はないものの、人生のほんのわずかな一瞬をとらえたさわやかな物語は、共感を呼んで、これが、ヒットした理由がわかるような気がします。

主人公フランシスは、親友のソフィとルームシェアしてニューヨーク、ブルックリンに住んでいる。モノクロームの素朴な映像に、モダンな音楽、それに乗せて二人の駈けるシーンから映画が始まる。

ダンサーを目指しながらも、実習生のままでいつまでも芽がでない。
彼氏と別れ、ソフィとも同居解消になり、フランシスは転々と渡り歩く羽目になる。

フランスに三日いってみたり、かつての母校の寮に入ったり、そうして過ごすうちに、彼女の周りの人たちが落ち着いていくのを見て焦る日々。

しかし思うようにならないフランシスの前に現れたのは、かつて、フィアンセと日本へ行ってしまったソフィにであう。そして、もう一度同じベッドで一晩眠った翌朝、ソフィは手紙を残して去ってしまう。

一人残ったフランシスは、メールボックスに入れる名前を書いて入れようとするが、長すぎて、折り曲げて入れると「フランシス ハ」になってしまってエンディング。

たわいない物語かもしれないが、どこか心が軽やかになり、不思議な気持ちになる一本で、淡々と語られる物語の背後に流れる音楽がとにかくいいし、フランシスの笑顔も素敵。ちょっと好きになる映画だった気がします。


「太陽の座る場所」
何とも、しまりのない映画だった。原作は辻村深月、監督は矢崎仁司である。

ミステリー仕立てのお話であることはわかるが、主人公が物語の芯になって見えてこないために、ストーリーを追っていけない。しかも、過去と現代が交互に登場するのだから、物語の中心がはっきりしないままに、終盤までながれていく。

体育館で二人の女子高生が対峙しているシーンから映画が始まり、どうやらこの二人、今日子と響子のお話であるようだ。しかし、同窓会の幹事をする島津が所々に登場し、高校時代のクラスメートたちのいじめや、恋がちらほら見えてくると、とたんにこの二人の女性がぼやけてくるのである。

脚本が悪いのか、高校時代を演じた二人の存在感が弱いのか、どうにもよくないのである。

結局、いつも太陽として存在したかった響子が主人公なのだろう。しかし、そのほかを演じた俳優たちと同等のレベルに見えてしまい、結局物語の中心になるべきミステリーのおもしろさ、高校時代のどこか不可思議な空気が、ちゃんと見えてこないのである。

山梨放送の何周年かの企画で、いわゆるローカル映画なのだろう。脚本の弱さを、演出でカバーできなかったという感じの映画だった。だから、やたら長く感じた。