くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「群盗」「水の声を聞く」

kurawan2015-04-30

「群盗」
韓国映画だが、ユン・ジョンビン監督作品なので見に行った。

韓国映画の歴史物というのは、たいてい、凡作だが、この作品も、大なり小なり、そのレベルの一本でした。ただ、マカロニウェスタンを意識しているのが明らかで、夕日をバックに、馬にのった盗賊が疾走する場面や、音楽の使い方、クライマックスでガトリング銃がでてくる展開など、まさにマカロニウェスタンの世界だった。

物語は19世紀末、圧政に苦しむ民を救うために、山奥に盗賊の集団が存在し、権力側と盗賊団との勧善懲悪の物語である。

一章、二章と区分分けしたエピソードをつないでいく展開で、一人の男の復讐劇と対する権力側の滅法強い二枚目との一騎打ちがクライマックスになる。

アクションシーンは細切れで、香港映画や中国映画に見る華麗さも流麗さもなく、細切れがスピード感を損ねてしまうのも確か。

まぁ、たわいのない一本で、見たからどうという映画でもなかった感じでした。


「水の声を聞く」
キネマ旬報のベストテンに選出されながら、ミニシアターの、しかもレイトに近い時間帯でしか上映されなかった作品を見る。監督は山本政志である。

正直、神経を逆なでするような展開と、アイロニーの固まりのような物語、そして、自主映画の空気があふれでてくるような映像が、確かに評価されるかもしれないが、個人的には、ちょっと好みの作品ではなかった。

映画は一人の日系韓国人ミンジョンという女性を教祖として、宗教ビジネスをしている団体を中心に描かれる物語である。

彼女は、自分の背後の水槽に満たしている水が語りかける言葉によって、迷う人々を救っている。この団体の背後には、ビジネスとしてプロデュースする組織があり、言葉の伝え方語り方までマニュアルにして、提供している。

ここに、ミンジョンの父で、やくざから金を借りて逃げ回るどうしようもない男が絡んでくる。さらに、ミンジョンも、そういう関係の男たちと面識があるという、在日韓国人独特の生活感が登場する。

宗教活動に悩んだミンジョンが、突然行方をくらまし、韓国で、自分を見直す。その間、代理の女性がカバーするあたりから、ストーリーに波乱が生じる。そして、戻ってきたミンジョンは、純粋に人々を救おうと、ビジネスを無視し始めるようになり、周りの反感と反乱を呼び、次第にメンバーとも溝ができて、やくざが絡んでくることでクライマックスを迎える。

ビジネスとしている間は順調で、純粋に活動をするとぎくしゃくしてくる皮肉がここに混じる。

ミンジョンの父がやくざに捕まり、儀式の途中をぶちこわされ、ミンジョンはレイプされる。倒れたミンジョンの地面に水がわき出るという「処女の泉」のような演出、さらに、韓国に帰ったミンジョンが、純粋に祈りを捧げると、日本の団体の部屋の水槽に浮かんだ木の葉が燃えだし、暗転、美空ひばりの「愛燦々」がんがれてエンドクレジット。

まるで鯣をかんでいるように、どんどん映画に味がでてくる展開は、なかなかの作品だと思えるし、普通の映像に、突然細かいカットを繰り返したり、凝ったカメラワークも見られ、映画としてはクオリティは高い。評価されるのもわかる。しかし、好きな映画とはいえない一本でした。