くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ワン・デイ 23年のラブストーリー」

ワン・デイ23年のラブストーリー

「17歳の肖像」のロネ・シェルフィグ監督作品で、しかも大好きなアン・ハサウェイ主演なのだから期待しないわけには行かない。
そして、期待を裏切らないとってく切れ否ラブストーリーでした。

景色のショットが実に美しい。イギリスにこんなきれいなところがあったのかと思えるようなアングルで最高の一瞬を捉えた画面はそれだけで絵になるようである。そしてそんな美しい景色を背景に主人公エマ(アン・ハサウェイ)とデクスター(ジム・スタージェス)の物語が展開する。23年間にわたる聖人の日である7月15日を人生のそれぞれの一瞬として捉えていく物語はすべてを見終わって思い起こして初めて一本のピュアな物語として胸に感動を呼び起こしてくれます。アン・ハサウェイのチャーミングさももちろんですが、ジム・スタージェスの二枚目振りが最高に作品を引き立てていて、脂ぎったアメリカ映画の男とは一味違う味わいで成功から挫折、そして再起までのデクスターをスクリーンに登場させていきます。

開巻、アン・ハサウェイ扮するエマが颯爽と自転車に乗っている。アニメチックに2006年7月15日。左手で左折する彼女のショットから物語は1988年7月15日、エマの大学卒業式の日へ。レイチェル・ポートマンの音楽がとっても美しく、そのメロディとロネ・シェルフィグの映像感性により描かれるうっとりするような景色、そこにかぶさるタイトルが見る見る私たちをロマンティックな映画の世界にいざなってくれます。

画面のいたるところにアニメチックに挿入される・・・・年7月15日の文字の中、その時々の尼とデクスターの物語が語られていく。卒業式の日、生真面目なエマはデクスターと一夜を共にするもベッドインすることなく二人は友達でいることを約束してわかれる。デクスターは深夜番組の司会でどんどん人気を博し、一方生活は見る見る派手になり荒れていく。そんな息子を疎ましく思う両親のエピソードもどこか物悲しい。一方のエマは作家を目指すも父として進まず気乗りしないメキシコ料理の店でバイトをしながら勉強している。底へ学生時代の友人イアンが絡んでくる。

人気は出るもののどこか寂しさを隠せないデクスターはことあるごとににエマと会い、恋人でもない一歩手前の関係を維持しながらそれぞれの人生の傷をなめあっていくようでもある。時に二人で旅行などをするのだが、俯瞰で捉える港に点々と浮かぶ船のシーンや、さりげなく見せる夜景、かなたに見える寺院の塔などこれまでイギリス映画で使われなかった美しいカットが次々と出てくる。

やがてデクスターも次第に人気にかげりが出始め酒びたりになり始める。エマと逢っても衝突ばかりとなる。そんなとき大学時代の友人でコメディアンを目指すイワンと急接近したエマは同棲生活に。一方デクスターはシルヴィという女性と結婚、娘も生まれる。

エマとデクスターそれぞれの人生が一方で語られ、その父子ぶりのように7月15日の二人の交流が描かれていく。時が進むにつれていつの間にか切なさがにじみ出てくる展開がこの監督らしい演出でどんどん引き込まれていきます。

しかしデクスターはシルヴィと離婚、そんな挫折の中ようやくエマとの真の愛に目覚め二人は抱き合う。このまま二人は最高の人生を迎えうるはずだったが、ある朝、子供ができないエマは苛立ちをデクスターにぶつけて出かける。そして気を取り直して夕方食事をすることを約束し、デクスターの待つ店に行く前に電話。ところがデクスターの電話は留守電で遅れる旨のメッセージを入れて颯爽と自転車で向かうシーン。そしてファーストシーンへとかぶさる。ところが途中で交通事故に会い即死。留守電メッセージを聞くデクスターのショット。あまりにも悲しい結末である。

この後、エピローグとしてシルヴィとの間の娘と草原を走るショットと、若き日のデクスターとエマが走るショットをかぶらせたり、初めてであったエマとデクスターのシーンをフラッシュバックしたりして物語のエピローグをつづって映画が終わる。

7月15日をポイントに描いていくためにや描ききれないシーンが物足りなくなるように思えるときもありますが、デクスターの母の死、父が新聞でたたたかれた息子を訪ねるシーンなど細やかな配慮を施された丁寧な脚本の組み立てはみごと。エピローグまですべてを見終わって、映画のシーンをもう一度思い起こしてつなげていくとどこかとっても美しすぎる物語に触れた気がして心地よくも物悲しい感動に包まれました。人それぞれ感想はあるでしょうが、私はこの映画とっても大好きな一本になりました。、