監督一人のみではなく、主演の二人にも同時にカンヌ映画祭のパルム・ドール賞が授与されて話題の映画を見に行きました。
全編に流れるラブストーリーの、美しい映像の旋律が、スクリーンから奏でてくるすばらしい映画でした。
確かに、描かれる中心のお話は、アデルとエマという二人の女性のレズビアンの関係を描いた作品です。しかし、そのラブシーンの美しさは、息をのむほどに清らかで純粋。しかも、初めて二人がキスをする大木のそばのベンチのシーンの美しいのも必見のシーンです。
監督はアブデラティフ・ケシシュという人。
とにかく、アデルを演じたアデル・エルザルコプレスとエマを演じたレア・セドゥの二人の女優が抜群に魅力的でキュート。アデルが、まだまだ純粋で一途な若々しさを演じる一方で、エマが、少し年上であるものの、芸術家という感覚が全体を包み込んだ、ミステリアスな美しさをにおわせてくる。そして、この二人が、まるで運命のように出会い、なるべくして愛し合い、そして残酷ではあるが、なるべくして、それぞれの道へ進んでいく物語に、熱い感動を感じざるを得ません。
映画は、高校生のアデルが学校へ行くため、バスに駆けつけるシーンから始まります。文学を専攻する彼女は、ふつうの学生、周りの友達と騒ぎながら日々を送っている。
トマという男子学生と知り合い、つきあい,SEXをするが、何か物足りなさを感じ別れる。その彼女が、たまたま町でブルーに髪の毛を染めたエマとすれ違う。そして、二人はなぜか振り返り視線を交わす。
アデルは、たまたま女友達にキスをされ、なにかが心の中に芽生える。このシーンも、危ういほどに美しい。
そして、トマと別れたアデルは、友達とゲイバーに飲みに行くが、そこで、エマと再会するのである。二人は、自然と意気投合、やがて体を重ねる。全裸の二人が絡み合うシーンはもちろんエロティックではあるものの、まぶしいほどに美しいのも事実。これがラブシーンだといわんばかりの映像美に引き込まれる場面である。
画家を目指し、美術学校に通うエマはアデルをモデルに絵を描く。やがて、アデルも幼稚園の先生になり、エマと同居を始める。このまま、楽しい生活が続くかと思われたが、ふとした行き違いで、別れることになる。このときの二人の喧嘩のシーンが、はじけるほどに激しいのも、この作品の演出のレベルの高さを思い知らされる。
カメラは、手持ちで人物を追いかけていくが、短い切り替えしで、決して退屈させないリズムを持ち、作品全体に統一した旋律を生み出していく。
それぞれに、それぞれの生活を進むアデルとエマ。エマは念願の個展を開催、今は幼稚園の先生として生活するアデルを招待する。
個展に出かけ、成功したエマを遠くから見つめるアデル。少しずつ二人はそれぞれの道を進むべく踏み出していったのを感じる。それでも二人のあのひとときの物語は、決して死ぬまで消えることのない至福の時だったとお互いに認めながら、エマは来客の雑踏の中へ、アデルは一人、自分の生活に帰っていく。真っ青なドレスを身につけたアデルの後ろ姿でエンディング。
三時間を裕に越える長尺な作品ですが、一本の作品として統一された美しさに、ほとんど、間延びする場面が存在しない。完成品とはこういう物をいうのだろうと充実感に浸れる作品でした。