くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「思秋期」「ハスラー」

思秋期

「思秋期」
非常にまじめなシリアスな映画。そんな印象の一本。絵がきれいというわけではなく、一人の怒りを抑えられない男ジョセフと夫のDVに苦しむ女性ハンナの物語である。

映画が始まると酒場から悪態をついてでてくるジョセフ。当たり散らした末に愛犬さえも蹴り殺してしまう。自分でも押さえられない怒りに耐えかね嫌気がさして飛び込んだ雑貨店、そこで一人の女性ハンナと出会う。物語はジョセフの姿から始まり途中からハンナの物語へ移行する。

ハンナは夫のDVに苦しめられ、ジョセフの向かいの少年の母の愛人は少年に冷たい。人間が押さえきれない暴力に焦点を当て、その怒りが何ともいえない悲しみに変わる姿を丁寧に描いていく。

ジョセフを演じたピーター・ミュランが非常に好演で、彼の一挙一動と表情が作品を牽引していく感じがします。

果たしてジョセフの妻の死はジョセフの怒りによるものだったのか、そんな謎もかいまみられる今に飾られる写真のショットも意味深。どうしようもなくなってハンナは夫を殺してしまうが、今まで目的のなかった怒りが向かいの少年を噛んだ犬を殴り殺したことで目的を持ち、結果、逮捕される。出所後、夫殺しで収監されているハンナに会うショットでエンディング。静かに心に残る映画でした。

ジョセフの親友の死、周囲から友人が消えていく悲しさと孤独、そんなやるせない心のより所の片隅に生まれたハンナとの淡いラブストーリー。静かで重い内容にも関わらずどこか胸に響く一遍だった期がします。いい映画でした。


ハスラー
何十年ぶりかで見直した映画史に残る名作。THE ENDとでたとたんにドーンと迫ってくる名作の迫力に圧倒されてしまう。まさに男のドラマであり大人のドラマです。

ストップモーションで繰り返されるシーンをバックにクレジットが流れ物語はカリフォルニアからでてきた主人公エディが小金を稼ぐために相棒のチャーリーとたわいないプール試合を画策ところから始まる。そして、資金もそこそこたまったところで目的のミネソタ・ファッツとの大試合へと望む。そして、出だしの好調は一転して奈落の底に落ち込むエディ。こうしてこの名作「ハスラー」のドラマが幕を開けるのです。

小児麻痺で足の悪い女性サラと出会い、ひとときの安らぎを得る。しかし、ハスラーの血が騒ぎだし、そんな彼を食い物に戦と裏社会の男バートが近づいてくる。

チャーリーが去りサラも自殺、すべてを失ったエディは再びファッツに挑戦、生まれ変わった気力でファッツを圧倒するが、そんな彼にさらにバートが声をかける。しかし、この世界に嫌気が指したエディはプールバーを後にする。

エディが手前に消え、ファッツも手前に消え、画面奥にじっと座るバートのシーンでTHE END。これこそ名作の貫禄あるエンディングである。すばらしい。