くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「学園広場」「非行少年 若者の砦」「家族ゲーム」

学園広場

「学園広場」
たわいのない学園ドラマで1時間あまりの作品であるが、実にテンポがいいし小気味良い。あれよあれよとストーリーが前に進んでいくし、それぞれの登場人物が本当に明るく描き切れている。

カメラの動きも軽快で、細かいカットや展開のおもしろさはやはり映画産業華やかなりし頃の当たり前の技術がしっかりと根付いているのである。

脚本は若き日の倉本聰で、それ故か、一つ一つのプロットの組立や構成の運び方が本当に無駄がないし、笑わせるところはしっかりと観客をつかんで笑わせてくれる。

ストーリーに現実性がないとかあるとかはそっちにおいて、気楽に楽しめる本当の娯楽映画というのを肩の凝らない作品としてみることができた気分です。このレベルの映画でさえも現代は作れないのが非常に残念。

最後に、松原智恵子が抜群にかわいらしく、ファーストショットでドキッとするほど釘付けになってしまいました。


「不良少年 若者の砦」
元不良少年のイワミシンジが成人後、一人の不良少年の家庭教師に雇われるという設定の物語であるが、おきまりの先生と生徒の心温まる物語になっていないのは藤田敏八監督作品の色づけである。

イワミシンジが先生の手をナイフで突き刺すファーストシーンからタイトルバック。いつものような甘酸っぱい青春ドラマというより、どこか屈折した姿で生きている高校生の姿を描いていく。

クライマックスに連合赤軍日航機乗っ取り事件のニュースが流れたりと、当時の時代背景に敏感に感じた藤田監督がその訴えかけるべきメッセージを青春ドラマに織り込んだかのように思えなくもない。

物語の構成はややあらっぽく、不良少年に絡んでくる学生や、妊娠したと訴えかけてくる女性、さらに兄や姉、母との複雑な家庭環境の描写が中途半端に終わっている。

ラストで数学の先生をおそってけがを負わせ、警察に捕まる展開がとってつけたようになってしまっているものの、取調室でイワミがつっぱなすように少年に言葉を浴びせるシーンはまさに藤田監督の当時の若者へのメッセージかもしれません。決して傑作と呼べないかもしれないけれど藤田敏八監督ファンとしては見逃せない一本でした。


家族ゲーム
何十年かぶりで見直したけれど、全く色あせることのない、ずば抜けた傑作だったことに改めて気がついた。

有名な横一線の食卓のシーン、繰り返される家庭教師と息子のどこか不思議な掛け合い。一見、それぞれの家族がそれぞれを思っているようで実はバラバラという不思議な空間で繰り広げられる日常、ラストシーンのヘリコプターの音。どれもこれもほとんど覚えていたけれど、やはり記憶の彼方のシーンもちらほら。それでいても、笑いがどこかブラックで、それでいて、まるでファンタジーのような装いが映画全体に漂っている。

始まって、おわってしまうと、まるで今のことは夢のまた夢だったんじゃないかと思わせる絶妙のリズム。映像と音、そして俳優の演技の間、カメラワークのテンポ、それぞれがそれぞれに見事にコラボレートした結果が生み出す非日常の世界。

拍手して大絶賛という感想が不釣り合いな、それでいてたぐいまれな傑作という一本、それがこの映画だろうと思う。全く森田芳光監督にはまだまだ映画を作ってほしかったなぁとつくづく思います。