「キック・オーバー」
メル・ギブソンは「マッド・マックス」以外は好きではないのでみるつもりはなかったけれど、あんまり映画サークルのメンバーがおもしろいというので見に行きました。
いやぁ、おもしろかった。アイデアで見せる映画に久しぶりに出会った感じ。
「マッド・マックス」の逆バージョンのようにメル・ギブソン扮するドライバーが警察に追われている。といって逃げる車の中は二人のピエロに紛争している。しかし一人が撃たれ、アメリカ側からメキシコ側へ国境の壁を突き破って逃げるがメキシコ側で警官に捕まる。しかしその警官は汚職警官で車の中の金をみてそのままドライバーたちを逮捕する。そしてメキシコの刑務所にドライバーは送られるが、なんとそこはまるで場末の貧民街のごとしで、監獄というより一つの町である。
そこで、ドライバーは持ち前の観察力と機転で奪われた金を取り返すべく画策。そこへその町で知り合った少年が町のボスに肝臓を提供するというエピソードがからんでどんどん話が複雑におもしろくなってくる。
ラストは見事に監獄を出て金を取り返し少年の母と一緒にハッピーエンド。
ちりばめられた復縁やユーモアとメキシカンの軽快なリズムに乗せてどんどんハイスピードに展開するドラマは軽やかでリズム感抜群。不思議な異国情緒もにおわせて独特のアクションに仕上がっています。
物語の舞台といい、適度に複雑に絡んだ物語といい、さりげないラブストーリーも交えて、てんこ盛りに楽しめる。とっても得した一本に出会いました。
「アルゴ」
最近みた新作のうちで一番おもしろい傑作に出会いました。とにかく、ハラハラドキドキ、スピーディな展開とどこかユーモラスな彩り、娯楽映画を知ったものが作り得るエンターテインメントでした。
監督のベン・アフレックという人は脚本家としても俳優としてもその才能を発揮していますが、監督作の「ザ・タウン」もなかなかの一品立ったので少し期待していましたが、これほどとは思いませんでした。
映画が始まるとイランが歩んできた歴史が報道写真を中心に語られていく。合間合間にイラスト風の絵が挿入され、次第に現代に近づいてドキュメンタリー映像へと変わっていく。ハイテンポで、そしてさりげなくイランという国の政情、そしてこの映画の舞台の背景を説明するあたりは脚本家としての才能故でしょうね。
そして1979年、在イランのアメリカ大使館がイラン人民により選挙され、大使館員は拉致される。かろうじて逃げた6人はカナダ大使の私邸へ。この6人を救出するためにアメリカCIA職人メンデスが考えたのが架空の映画「アルゴ」のロケハンをよそうということ。
隠れている大使館員の緊張したシーンと架空のふざけたような計画ではしゃぐ映画スタッフたちのシーンが微妙に絡み、終始ぎりぎりの緊張感を作り出して観客を疲れさせないあたりの演出は見事というほかない。
そして後半、いよいよ脱出。緊迫したシーンの連続をハイズピードで細かいカットバックを繰り返して描いていく様はまさに娯楽映画の王道である。
もちろん、実話なのであるから結末はわかっているものの、それでも手に汗握る空港でのシーンはまさにこれが映画だと叫びたくなる。
脱出前日になり計画が中止、すべてが白紙になるかと思われたところへメンデスが決行を決意。アメリカ本国は彼を守るために再度航空券や映画の事務所を再会する。そのスリリングな時間合戦。一方イランでは大使館員たちの素性がばれてイラン軍が迫ってくる。飛行機の搭乗へ流れる一方で空港にたどり着くイラン軍。まず離陸を中止させればいいと思うが、とにかく飛行機を追っかけてくる。このあたり、冷静に考えると?なのだがこれが映画である。
そして、すんでのところで脱出成功。
エピローグでメンデスが別居中の妻に会い、愛する息子をベッドで抱き寄せてエンディング。全く、うならせてくれるぜ。見事な娯楽映画を見せてくれました。