くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「時をかける少女」(原田知世版)「高校三年生」

時をかける少女

時をかける少女
30数年ぶりに再見。懐かしいの一言、そして原田知世の愛くるしさに改めてファンになる。

青春の切ないひとときを描いた原作のすばらしさはもちろんですが、生まれ故郷尾道へのノスタルジーと古き映画への哀愁を映像に凝縮させファンタジックなラブストーリーに仕上げた大林宣彦の才能に拍手してしまいました。

とはいえ、この映画が公開された当時、観客の誰もがその一昔前にNHKの少年ドラマシリーズの名作「タイムトラベラー」をみている人もおおく、かく言う私もあの感動を再び味わうことはなかった。それほど「タイムトラベラー」はすばらしかった。

そう書いたとはいえ、こうしてもう一度見直した原田知世版の「時をかける少女」は上原健や入り江たか子などの往年の映画俳優を起用したり、エンドクレジットで登場人物が立ち上がってミュージカルよろしく歌い出したりと懐かしい黄金期の映画の息吹を再現していることに気がつく。

冒頭で「A MOVIE」とクレジットするように、映画というのはこうなのだと当時、まだ駆け出しに近かった大林宣彦はいいたかったのだろう。

作品全体のストーリー展開のリズムがやや弱いところもあって、特に後半は甘いが、それでも原田知世のはじけるようなみずみずしい魅力とりつかれてしまう。これは原田知世のスター映画なんだったと思い出してしまう。

この映画「時をかける少女」を初めてみたひとはほとんどが彼女のファンになった。「タイムトラベラー」をみた誰もが島田淳子という女優に見せられ、ケン・ソゴルを演じた男優に惚れたのと同じである。

ちなみにこの原田知世版では未来人の名前ケン・ソゴルは登場しない。そしてラベンダーの薬は原作やテレビ版がタイムリープの薬であるが、この映画ではただの薬草の薬のごとく描かれていて、ややSF色が薄いことに気がつく。

全体を思春期の揺れ動く少女のからだの危うさ、切ない初恋の切なさにテーマを絞ったためだろう。
もう懐かしいの一言、映画よろしく一緒にタイムトリップして懐かしい時代へ戻りました。あの日の一瞬を思い出しました。良かった。


「高校三年生」
国民的な名曲をバックに描かれる学園ドラマであるが、同様のパターンで描かれる今井正監督の「青い山脈」とくべると完成度の高さの雲泥の違いがはっきりと見えてしまう。

とはいえ、そんなめんどうなことを別にすれば、制作された1960年代の高校生たちの恋愛感、世相の考え方などが的確に盛り込まれた映画としては当時として最先端の学園ドラマだったかと思えます。

古い考え方で恋愛を否定し家柄や職業に偏見を持つ老人の存在、SEXへの嫌悪感と恋愛に対する極端な潔癖性を求める女学生の意識、教師と生徒の恋愛への支店等々、今となっては悪くいうと古くさくなったテーマが丁寧に描かれていく。

画面がまっすぐで工夫に乏しいし、カットとカットのつなぎが平凡ではあるけれども、そのストレートな誠実な画面が舟木一夫のヒット曲の映画版というイメージとしては成功しているのかもしれません。

いずれにせよ、今のテレビドラマのような薄っぺらが画面ではないし、その点だけでも見る価値は十分にあると思います。